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何から話したらいいか、分からないくらい君に秘密にしてきたことがある。



君は驚くかもしれないけど、私の人生は
想像もつかないくらいにひどく退屈なもの
だったの。



私は昔からある病気を患っていて、物心の
ついた頃からずっと入院生活。私の世界は
小さな病院内で完結してしまうような狭い
ものだった。



友達もいたけど、ほとんどの子は私より先に
退院してしまって、何回かお見舞いにきてくれた
後は二度と会わなかったりした。


だからそのうちずっと独りぼっちでいるのと
そう変わらないような気になってきて、私は
病院から抜け出したことがあった。




病院の外は広かった。どこまでも終わりがない
空間が目の前にあるみたいだった。私は嬉しくって
遠くまで歩いた。ずっとずっと遠くに行きたかった。





君と出会ったのはその時だったね。

土手の隅に一人、不貞腐れた顔で何故か
スプーンを睨んでいる少年を私は見つけた。


同い年くらいに見えたから、すぐに近づいて
「なにしてるの」と話しかけた。


君は不貞腐れたまんま、「スプーンを曲げる練習
をしている」と答えてくれたんだったね。





私ね、その時おっかしい人だなぁって思ったの。
それとも病院の外ではスプーンを曲げる遊びが
流行ってるのかしら、なんてのも思った。


とにかくこれが流行だったなら、私は知らないこと
を知られたくなくて無難に「へぇ」と答えた。


君はそんな私に目もくれず、ずっとスプーンを
睨んだままだった。




スプーンに夢中の君の隣に座って、私たちは
しばらく無口なままでいたね。


そのうち君が、「僕のお兄ちゃんは超能力を
持ってるんだ」なんて言い出すものだから、
私はますます君のことを変わり者だと思った。




君の言い分はこうだ。

僕のお兄ちゃんは超能力者だから、鉄棒を
グニャグニャにしたり消しゴムを浮かせたり
スプーンを曲げたりできる。でも弟の僕には
超能力がないんだ。だからスプーンを曲げる
練習を毎日するんだ。



私は君があんまりにも真剣な顔で話すので、
なんだか応援したくなった。


君のスプーン曲げに何時間も付き合った。


……結局、曲げられるときは来なかったのだけど。

私→←7日目.幽霊



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見毛 - すごい丁寧に書かれていてお話も面白い…とても面白いです…!律くんかっこいいなぁ…更新楽しみにしています (2019年4月2日 3時) (レス) id: fc0f2493d3 (このIDを非表示/違反報告)
ロイちゃん(プロフ) - めちゃくちゃ好きです!更新頑張ってくださいっ!! (2016年11月22日 6時) (レス) id: 0dbc3b26b1 (このIDを非表示/違反報告)

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作成日時:2016年10月23日 17時

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