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5日目.旅行券 ページ15

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「律!今日は花金だよ、明日は土曜日だよ!」


「そうだね。」





随分と聞きなれた声が左隣で響く。いつもの帰路。
しかし今日は金曜日。


こいつはいつもより少し上機嫌らしく、
るんるんと幽霊に似つかわしくない鼻歌
と共に体をふわふわと上下させた。


明日が休日であることを理由に幽霊は
また何かほざくつもりでいるらしい。




「ねぇ、律。明日は何か予定が入ってたりするの?」


「予定……明日は特にないけど。」


「えっ、それじゃあ……!」


「おっ、モブの弟じゃねえか。」





「それじゃあ」なんて期待に満ちた声を
かき消したのは、これまた聞き覚えのある
低めの声。


後ろからのその声に振り向けば、グレーの
スーツとピンクのネクタイが見えた。


……霊幻さんだ。





「よぉ、奇遇だな。」

「お久しぶりです。」





霊幻さんはニヒ、と笑うと、「最近はどうだ、
元気にやってるか?」なんてオヤジ臭く感じる
セリフを放つ。


その横で幽霊はわかりやすく肩を落とし、
知りもしないであろう霊幻さんのことを
軽く睨みつけていた。







「またこの辺で除霊の依頼が入ってな。まあ
今回は俺一人でなんとかなりそうだが……、
あ、てか話変わるけどお前旅行とか興味ある?」






平然と僕の隣を歩き始めた霊幻さんは
相変わらずまあよく喋る。

唐突に旅行に興味はあるか、なんて聞かれて
少し混乱したが、実は旅行は嫌いじゃない。





「嫌いじゃないです。……どうしてですか?」


「実は前の依頼人がお礼だっつって旅行券くれた
んだけど、最近忙しくて旅行なんか行く暇なさそう
なんだよな。これ、よかったらいるか?」





霊幻さんが差し出したのは短冊形の紙切れ。

そこには『日帰り旅行、海風を感じよう』という
誘い文句がでかでかと書かれていて、一目でそれが
旅行券であることがわかる。




「いいんですか?僕が頂いて。」

「あぁ。いらなかったら誰かにやってもいいぞ。」




「じゃ、そろそろ行くわ」、と片手をヒラヒラ
させながら去っていく霊幻さん。


僕の手元には旅行券だけが残され、あたりは静か。




……が、幽霊の目は旅行券に夢中のまま
ギラギラと輝ききっていてなんだか騒がしい。


……さっきお前が睨んでいた人がくれたものだぞ。

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見毛 - すごい丁寧に書かれていてお話も面白い…とても面白いです…!律くんかっこいいなぁ…更新楽しみにしています (2019年4月2日 3時) (レス) id: fc0f2493d3 (このIDを非表示/違反報告)
ロイちゃん(プロフ) - めちゃくちゃ好きです!更新頑張ってくださいっ!! (2016年11月22日 6時) (レス) id: 0dbc3b26b1 (このIDを非表示/違反報告)

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作成日時:2016年10月23日 17時

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