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リビングはよくクーラーが効いていて涼しかった。
昼食が並べられたテーブルの周りにある四脚の椅子のうち、二脚には別の人が座っていた。

言わずもがな、兄者さんとおついちさんだろう。
二人は座ったまま軽く此方へ会釈した。弟者さんは私に座るよう椅子を引いてくれる。そこに座るついでに小さく会釈を返した。

よくよく考えれば本当に不思議としか言い様のない空間だ。騒がしさがまるでない所に、私も混ざっている。神妙な空気感にもどかしさを感じた。

兄「じゃあ、いただきます。」

四人とも座れば、先を切るように兄者さんが告げた。周りもそれにならい言葉を発したあと、それぞれが食べ始める。

弟「あの、お名前お伺いしても良いですか?」
「はい、Aって…いいます。」

声を掛けられた事により、背筋を伸ばし返事をする。

弟「そう、Aさん…。遠慮しないで食べてください、今日、血液に良い食べ物にしたので。」

何故こちらにわざわざ血液にいい物だというPRをしてきたのかはまるで謎だが、確かに、目の前に並べられたそれは、魚や大豆等といったものばかりで、寝起きには比較的優しいあっさりしていそうな調理を施されていた。

しかも、改めて考えれば、人様の家で眠らせてもらった挙句、お昼までご馳走になろうとは、厚かましいにも程があるのではないか。いや、もう既に私の分まで準備をされているのであれば、それを頂かないのも失礼な気もするが。

お「Aさん、こっちも自己紹介するね?俺の名前はおついち。で、隣が兄者。君の横が弟者だよ。」

存じ上げております、なんて言っていいものかどうか少し悩んでしまう。結果、覚えやすい名前ですね、とか微妙な返事をしてしまったのだが、おついちさんは そうでしょ、と微笑みかけてくれた。

向かい合って箸を持つ向きが鏡合わせな二人に、本当に左利きなんだなあとぼんやり思いながら食べていると、今度は兄者さんが口を開いた。

兄「ほんっと、うちの愚弟がすみません。」
「え?」
弟「ちょっと兄者!まだなの!」
兄「はあ?お前あんだけコッチ戻ってくるの遅くて説明してねぇのかよ。」
弟「いや、どう部屋入ろうか困ってたんだよ。」

唐突な謝罪に思わず聞き返してしまう。謝るのは寧ろこちらであろうに、どういうことなのか。そう思っていると、兄弟はさっきまでの妙な静けさを打ち破るように会話を始めた。

繰り広げられる言い合いに慌てていると、ごめんねというようにおついちさんが笑みを向けた。

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はるの(プロフ) - 小説お気に入り150ありがとうございます。まさかこんなにお気に入り登録して頂けるとは思ってもいませんでした…!今後も数ヶ月に一話増えるか増えないかのような亀ペースでは御座いますが、御付き合い頂けると幸いです。 (2020年2月28日 1時) (レス) id: 65fc1d4448 (このIDを非表示/違反報告)
はるの(プロフ) - また、今まで小説のページの一枠に私の個人的書き込みを加えるのに何となく抵抗がありましたが、今後の展開がはっきり定まっていない所を、出来れば皆さんに助力を頂きたい為、もしかすると小説の頁の一つに私自身からのお知らせという形で更新する時があると思います。 (2020年2月28日 0時) (レス) id: 65fc1d4448 (このIDを非表示/違反報告)
はるの(プロフ) - あさりさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!只今リアルがやや多忙な為、かなり間が空いていますし、多分また空くと思われますが、宜しければご覧になって頂けると幸いです。 (2019年12月17日 23時) (レス) id: 65fc1d4448 (このIDを非表示/違反報告)
あさり - ほんとにあの方々とおしりあったら、??というリアルな心境が描かれていて、のめり込むように一気読みしてしまいました!すんんごい面白かったです!続きが読める時をいつまでも待ちます!! (2019年8月13日 23時) (レス) id: 500eb03ae7 (このIDを非表示/違反報告)
はるの(プロフ) - そっと感想を、さん» ふわぁぁあ、嬉しいお言葉をありがとうございます…! (2019年7月29日 1時) (レス) id: 65fc1d4448 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:はるの | 作成日時:2019年6月30日 21時

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