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#7 ページ7

「え、え?…大丈夫ですか…!?」

先程とは一転、色々な事に驚きを隠せずにいるも、私はすぐ彼に駆け寄り、その場にしゃがめば軽く揺さぶった。

弟「はぁ、…苦しい…っ。」

一目瞭然だった。夏相応の薄着を着た彼の素肌は、その季節だからといったものでは無い、嫌な汗をかいているのが分かる。
赤い瞳は上手く焦点が合わないように揺らいでいた。

私の腕を支えにするように弟者さんは掴みにくる。そして座るつもりなのか、その手を腕から肩に滑らせ這い上がろうとしている。
彼の体重がこちらへ段々と預けられてくる。

「ちょ、重…っ…て、そうだ、救急車…!」

彼の具合の悪さからいって仕方の無い事だが、思わず重い、と口にしてしまう。
彼の腕と私の体に挟まれたコードが引っ張られ、片耳に付けていたイヤホンが外れる。
その時、はっとしたように自分の手元を見やった。
早く救急車を呼ばなければ。

彼は私の肩に顎を乗せるにまで上がってきた。
それを必死に支えながら、何とかスマホの電話に3つの番号を打ち込む。
私はイヤホンをジャックから半ば無理矢理引き抜いて本体を耳元に当てた。

片方が通信音で塞がれる事により、もう片方の弟者さんの苦しく喘ぐ声も妙に鮮明に聞こえた。何だか聞いてて恥ずかしくなる。

そんなこと考えてる場合じゃない。早く繋がってくれ。と冷静を繕う感情がそれを制止させた。

"119番消防です。火事ですか。救急車ですか。"

耳元から口早に問われる声が聞こえた。だが私はそれに答えることは叶わなかった。
スマホを落としてしまったのだ。

首元に、刺さり喰い込むような激痛が走ったから。
そしてそこは、空気に当たると冷える、少し濡れたような感覚と、血管が妙にずくずくと血を流している感覚を増させていた。

何が起きているのか理解できない、ただ、必死に彼を支えていたはずが、気が付けば、背中へ腕を回され、私の方が彼に支えられている。
力が入らない。

「たす…け……。」

私はか細く助けを求めたが、その声は、夜の涼風に静かに流されるだけだった。


そのまま意識を失った。

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はるの(プロフ) - 小説お気に入り150ありがとうございます。まさかこんなにお気に入り登録して頂けるとは思ってもいませんでした…!今後も数ヶ月に一話増えるか増えないかのような亀ペースでは御座いますが、御付き合い頂けると幸いです。 (2020年2月28日 1時) (レス) id: 65fc1d4448 (このIDを非表示/違反報告)
はるの(プロフ) - また、今まで小説のページの一枠に私の個人的書き込みを加えるのに何となく抵抗がありましたが、今後の展開がはっきり定まっていない所を、出来れば皆さんに助力を頂きたい為、もしかすると小説の頁の一つに私自身からのお知らせという形で更新する時があると思います。 (2020年2月28日 0時) (レス) id: 65fc1d4448 (このIDを非表示/違反報告)
はるの(プロフ) - あさりさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!只今リアルがやや多忙な為、かなり間が空いていますし、多分また空くと思われますが、宜しければご覧になって頂けると幸いです。 (2019年12月17日 23時) (レス) id: 65fc1d4448 (このIDを非表示/違反報告)
あさり - ほんとにあの方々とおしりあったら、??というリアルな心境が描かれていて、のめり込むように一気読みしてしまいました!すんんごい面白かったです!続きが読める時をいつまでも待ちます!! (2019年8月13日 23時) (レス) id: 500eb03ae7 (このIDを非表示/違反報告)
はるの(プロフ) - そっと感想を、さん» ふわぁぁあ、嬉しいお言葉をありがとうございます…! (2019年7月29日 1時) (レス) id: 65fc1d4448 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:はるの | 作成日時:2019年6月30日 21時

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