2BRO.さん、吸血鬼でした。

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私は口元だけに笑みを作り、暫し停止していた。
兄者さんは、私の目前で手をひらつかせてくれる。それに気付けば、私は視線のやり場を無くし、適当な空を見つめていた。

｢冗談…ですよね？｣
弟｢ホントですね…。｣

私の首元にあるあの歯型、噛み付く行為、それらは彼が吸血鬼だとなれば、容易に受け入れられるもので。

｢え、…今までも稀に人間の血を吸ってたんですか？どうやって？｣
お｢それは無いんだ。弟者が今回人生初めてやらかしたね。｣
兄｢くそ不味くて嫌になるが、血が欲しい時は自分の腕とか、だな。｣

当たり前のように二人が説明をしてくれる。
自分自身の腕に噛み付いてたというのか。

｢あ、そうか…お二人も吸血鬼、なんですか？｣
お｢そうだよ、ほら。｣

頷いたおついちさんは、片手の小指を頬粘膜の方へ差し込み引っ張り、もう片方の手で上顎の尖った犬歯を指さした。
よく見ると、下の犬歯も立派に尖っている。

｢それ、牙…ってことですよね。｣

私は、そんな者が実在したのか、と前屈みに歯を覗いていた姿勢を戻し背もたれに身を預ける。
ゲーム実況を勤しんでいる彼らは吸血鬼でもあったと。素顔をまるで出すことが無いのは、勿論人気のある人であり、特徴的な声を持つ彼らが日常をバレないよう過ごす為のものでもあるが、人並外れた犬歯を隠す為でもあったのだろうかと小さく息をつく。

兄｢そんでだな、お前さんは俺達の事を知りすぎた。｣

切り替えるように鋭い口調で告げる。
聞こえてきた言葉に不安を抱き、私は黙ったままどことも言えぬ空から兄者さんへと視線を移した。

｢どういう事ですか？｣
兄｢嬉しい事に俺らのファンである人間に、素顔やら住み場所やら秘密やら…バレちまったんだ。簡単に帰してやると思うか？｣

三人の立場から考えれば、なるほど、帰せる訳がないだろう。今はネット世界、少しそれらしい事を私に書き込まれてしまえば、彼らの実況活動は終わりを迎えるのだろう。

｢逆に、ファンだから見逃しても大丈夫、とは…思えませんよねぇ…。｣

大丈夫と思えませんか、そう言いたかったのだが、最終的には自分も否定を認めてしまう。


どうやらとんでもない事に巻き込まれてしまったようだと、考え込むようなため息を一つ吐き出した。

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