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「乾杯!」
かけ声と共にいっせいに各々の頼んだ飲み物の入ったグラスを中心に近付けて軽く当てあい音を鳴らす。
私は最初の一口が特に気持ちのいいビールを、己の喉に流し込んでいく。
「A先輩、豪快な飲み方ですね。」
一気に飲み干して空になったそれを置けば、後輩が笑いかけながら話しかけてくる。
「こんな仕事してるんだから、豪快に飲んでないとやってられないのよ。」
私は肩を竦めて言葉を返す。
明日は土曜日で休日なのだから、多少飲み過ぎたとしても、彼らに迷惑をかけさえしなければ問題ないのだ。
そうだ、一人暮らしの寂しい社員には、お酒ぐらいが癒しなんですよ。
心の内でそう更に言葉を付け足しながら、私たちは適当に注文を増やしていく。
「そういえば、昨日やってた心霊現象の番組、見ました?ちょー怖いの!」
同僚の話題に皆が乗っかっていく。昨日はたまたま実況動画を見ていた為に、残念ながら私はそこにあまり乗ることは出来なかった。
皆が大袈裟に恐怖で冷えた体を温めるかのように自身の腕を摩る仕草を見せる。
「そんなに怖いやつだったの?」
「そりゃあ、もう。ドラキュラに取り憑かれた男性の話とか、不気味すぎて…ひええ。」
思い出してはまたわざとらしく怯えた声を漏らす後輩に、皆が笑いかける。
見とけばよかったかなあ、と今だけの後悔をしながらも、ふとSNSの通知に気付けばスマホに目を落とす。
つい昨日見ていた実況者さんのものだ。
"今日の弟ライブは用事があるのでお休み!でもかわりの動画を上げるからお楽しみに♪"
現在の時刻は19時過ぎ。
そうか、ライブ放送も無いのなら、尚更今日は飲み会で良かったやもしれない。
一日に楽しみがいくつもありすぎても困るというものだ。
私はまだ数分しか経っていないにも関わらず、沢山のRT、いいね、リプをされているそれに、いいねを増やすものの一人となってから、スマホの画面を閉じた。
「Aさんは?この後もう一個行ったりする?」
私が画面に目を落としている間に、二軒目についての話をしていたらしい。
「うん、行こうかな。でもまだ此処に居るでしょ?」
「まあ!まだ全然時間経ってないですから!」
ほら、二軒目の話なんてまだ気が早すぎるんだと仲良く話を弾ませる同僚と後輩に、私は静かに笑を零した。
今って充分幸せだよね。
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はるの(プロフ) - 小説お気に入り150ありがとうございます。まさかこんなにお気に入り登録して頂けるとは思ってもいませんでした…!今後も数ヶ月に一話増えるか増えないかのような亀ペースでは御座いますが、御付き合い頂けると幸いです。 (2020年2月28日 1時) (レス) id: 65fc1d4448 (このIDを非表示/違反報告)
はるの(プロフ) - また、今まで小説のページの一枠に私の個人的書き込みを加えるのに何となく抵抗がありましたが、今後の展開がはっきり定まっていない所を、出来れば皆さんに助力を頂きたい為、もしかすると小説の頁の一つに私自身からのお知らせという形で更新する時があると思います。 (2020年2月28日 0時) (レス) id: 65fc1d4448 (このIDを非表示/違反報告)
はるの(プロフ) - あさりさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!只今リアルがやや多忙な為、かなり間が空いていますし、多分また空くと思われますが、宜しければご覧になって頂けると幸いです。 (2019年12月17日 23時) (レス) id: 65fc1d4448 (このIDを非表示/違反報告)
あさり - ほんとにあの方々とおしりあったら、??というリアルな心境が描かれていて、のめり込むように一気読みしてしまいました!すんんごい面白かったです!続きが読める時をいつまでも待ちます!! (2019年8月13日 23時) (レス) id: 500eb03ae7 (このIDを非表示/違反報告)
はるの(プロフ) - そっと感想を、さん» ふわぁぁあ、嬉しいお言葉をありがとうございます…! (2019年7月29日 1時) (レス) id: 65fc1d4448 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はるの | 作成日時:2019年6月30日 21時