110.夏の気の迷い(ロンジュンside) ページ10
Aは電話を切ると心配そうに俺の顔をもう一度覗き込んだ。
こんなに近くで視線が合うことはなかったし、いつもの無表情とは違い、自分を思ってくれる表情に自然と鼓動が早くなっていった。
「まだ顔色が悪いのでオッパが来るまで横になってほうがいいですよ」
Aが俺の額を撫でるように触れる。汗で額にくっついている前髪を目に入らないようにずらしてくれているようだ。
冷たい手が気持ち良くて、離れる彼女の手を掴んだ。
「お前の手、冷たくて気持ちいい。もっと触って」
自分でも何を言ってるんだと思ったけど、目の前のAの方が顔を真っ赤にして、動揺したように瞳を揺らしていた。
手の先まで熱くなった俺には、冷たい彼女の手が気持ちよくて、親指で彼女の手の甲をなぞった。
「わ、分かったので横になってください！」
そう言うとAは慌てたように俺の肩を押して横にさせた。
一つ溜息をつくと、俺の額を撫でた。
「後から憎まれ口叩かないでくださいね」
「流石に言わねえよ」
俺が間髪入れずに答えると何が面白いのか静かに笑っていた。
「昔オンマが私にしてくれた寝かしつけみたいです」
「あっそ」
そう言うとAが何を思ったのか子守唄を歌いはじめた。悔しいけど綺麗な歌声で聴き惚れる程、透き通った声だった。
俺はぼんやりとした頭で彼女を見上げた。
何でこいつは何度も酷い態度をとった俺に優しく出来るんだろう。
「どうですか？良い子になれそうですか？」
Aが俺を揶揄うように言った。その笑顔が少しだけヘチャンと重なってみえた。
廊下からバタバタと何人かの足跡が聞こえるとAは俺の額から手を離して距離を取った。
それと同時にヘチャン達が部屋に入ってきて俺の元に集まった。
「ロンジュニ大丈夫か？」
「ヒョン、中々帰ってこないと思ったら倒れてたんですね」
「やー、水は飲んだのか？無理してでも飲んどきな」
一気に騒がしくなった部屋を後からやってきたマネヒョンが収めた。その後、俺は念の為、病院で検査を受けることになった。
病院まで行く車の中。
俺は窓の景色を見ながら、先程のAのことを思い出していた。
そして、先程彼女が歌っていた子守唄を口ずさむと、マネヒョンが驚いたように声をかけてきた。
「それ、韓国の子守唄だろ？よくそんなの知ってるな」
「お節介なお人好しが俺に教えてくれたんです」
不思議と車の窓から見える景色はいつもよりも輝いて見えるような気がした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 885人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「NCT」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アットゥゴな鯛焼き(プロフ) - 卯年さん» コメントありがとうございます！ファンなんて恐れ多いです！これからもヘチャンと主人公のシスコンブラコンぶりを書いていこうと思うので時間がある時に見にきてくださると嬉しいです(^^) (8月16日 1時) (
レス) id: cde0f29250 (このIDを非表示/違反報告)
卯年(プロフ) - こんにちは、いつも楽しく読ませていただいています。大ファンです！ ヘチャンと主人公とのラブラブぶり？に微笑ましくなりつつ、キュンキュンしつつ、主人公の成長を見守ってます。これからも応援しています。 (7月27日 17時) (レス) id: a62967e81b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぷもんぱん | 作成日時：2023年6月19日 1時
