レモンと金糸雀 IV (ページ2)

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earthquake ページ2

《番外編》

夕方頃に帰宅し、

明日の仕事の準備と、洗濯物を畳んでの繰り返しをして、宏太朗さんが帰ってくるのを待つ。

ふかふかなソファは私の居場所なのだ。

23:38

『ん、あれ？』

テレビ横にある置物がカタカタと音を立てている。

なんで急にそんな音が……

そう思い、その置物に手を伸ばした刹那。

よろけるくらいの揺れ。ふれ動くカーテン。

ソファ前にあるテーブルに白湯の入ったグラスに広がる波紋。

地震だ。

長く続いた横揺れ。

私を恐怖のそこに追い詰めるのは容易くて。

『やばい、まど、開けなきゃ』

揺れる中必死に窓を開け、コンロにおいてあった鍋をシンクに。

ガス栓を閉め、テレビでの速報を聞く。

『震度6…… おっきい…ままに連絡、……いや、宏太朗さんに連絡？でも収録中じゃ…うｯ…！』

ぽかぽかとお腹の中で大暴れのわが子。

落ち着けと言われてるみたいだった。

“津波の恐れがあります。海岸付近にお住まいの方は直ちに避難を！”

『どうしよ』

パニックになった。こんなんじゃこの子のこと守れない……！

ﾌﾞ-ﾌﾞ-!!! ﾌﾞ-ﾌﾞ-!!!
現場終わりにマナーモードを解除するのを忘れていたのかスマホが震える。

「もしもし！A！今どこ？」

『こうたさ、いま、おうちで、こうたろうさんは！？収録は！』

「今終わってて、そしたら揺れたから大丈夫だよ。家なのね、よかった……」

すっかり萎縮してしまってた私の身体の筋肉達が彼の声を聴いてすごく安心した。

「今さ、電車乗ろうと思ってたんだけど止まっちゃって立ち往生してる。」

『うそ。……ほんとだ。ニュースでやってる停電してるとこもあるって』

「まじ？こっちは……あ、信号消えてる」

『…迎えいく？』

「ううん。大丈夫だよAちゃんはべびたんとおうちで待ってて。ちゃんと帰るから」

『でも、』

「でもじゃない。今Aちゃんが動いても渋滞とかして帰れなくなったら困るでしょ？それと今後停電するかもしれないから、暖かい格好して、念の為靴とか近くにおいてまってて」

気づいてないと思うけど、声震えてるから。

『うそ、あ、』

スマホを持っていない手をみたら可哀想な程に震えてた。