カラフルボックス２ (ページ3)

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「だけど…」

「だけど？」

「俺には足りない物が多過ぎます」

サーブもレセプションもディグもまだまだ。
経験値も足りない。
ミスをすれば心が顕著に揺れ、ネガティヴが顔を出す。

周囲の目はやっぱりどうしても俺が全日本の選手だったという認識であり、不甲斐ないプレーをすれば「全日本はこんなもんか」と一緒にプレーをして来た人達まで嘲笑されるのは絶対に嫌だ。
あの時、スランプに陥った時、支えてくれた部のみんなの力に少しでもなりたい。
だから、ひとつひとつ確実に不安要素や足りないモノを潰して、胸を張ってコートに立てるようにしなければ。

「A。あまり気負い過ぎるなよ。欲張り過ぎると腕に余って零れ落ちるからな」

ポンと頭に乗せられた手は、いつだって俺に力をくれ、背中を優しく押してくれる。

「マサさんの手って不思議ですね」

「何が？」

「上手く言葉には出来ないんですけど、何か不思議なんです」

「良い意味で？」

「勿論です」

なら良いや、とさっきより少し手荒にワシャワシャと撫でられ、それも嬉しく思うなんてどれだけマサさんに傾倒しているんだろうか…。
勿論、そうなるだけの行動や言動をマサさん自身が示しているんだけど。

無意識のうちに、もっとして欲しいという深層心理が働いて自らその手に頭を擦り寄せるようにしてしまい「あ」と気付いて身を離そうとしたけれど、それを阻んだのはマサさんだった。
俺の頭をグイと引き寄せて、「珍しいな」と笑う。

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