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放課後の教室。
窓の外から様々な部活の音が聞こえて来ている中、吹奏楽部の音に思わず手を止
めた。
それはクラッシックとかそういう曲ではなくて、耳慣れた邦楽。
軽快なリズムに無意識に体がリズムを刻む。
「野球部の応援の練習かなぁ」
「ねらいうち、だっけ？ヒッティングテーマの練習かな」
「今年も全校応援あるよね」
「だろうね」
面倒臭いとか日に焼けるとか色々言ってた人もいたが、結局はみんな応援に熱を出すのだ。
野球でもバレーでも、テレビとかで見るのと生で見るのでは面白さが全然違うから。
「あ。ユウキちゃん、消しゴム取って」
「はいよ」
「三限の数IIってなにやったっけ？」
「指数、対数関数」
「そうだった」
週番の私は学級日誌に今日の記録を記入中。ちなみに相棒はユウキちゃん。
「先に部活行ってて良いよ？」なんて言ってみたりもしたけど、答えは否。
最後まで待っていてくれるつもりらしい。
「上条ちゃんさ〜」
「なに？」
「来週の日曜、バレー部うちで練習試合あるんだよね」
応援来てくれない？と小首を傾げた子犬のような顔に頷きそうになるけど、おっといけない。
「その日はうちも大会だから行けない」
「そうなんだ。それは残念」
「私もユウキちゃんの勇姿が見れなくて残念」
「上条ちゃんが来てくれたらユウキくん頑張れるのに」
この顔は時たま見せる顔だ。
子供のような、人を試すような、そんな笑顔。
「嘘つき。そんなヤワな精神してないでしょ」
「言うね。事実だけど。
でも、来てくれたら嬉しいのは本当だよ」
「じゃあ、念を送っておくよ」
「そーして。俺も送っておくからさ」
お互いの勝利を祈ってぶつけ合った拳は、夕陽の赤に染まり、何だか特別なものに見えた。
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作者名：速水 | 作成日時：2016年6月17日 18時
