カラフルボックス

ある青年の受難４(#12)男主 ページ34

「ね！ね！聞いて！アキ！」

「ナギ、煩い。ハウス」

「れっきとした脊索動物門哺乳綱霊長目ヒト科ヒト属ですか何か？」

「ハウス」

「ねえ、山内くん？人の話聞いてる？聞こえてる？」

「聞いてないけど聞こえてる」

「それ酷くない？ねえ、酷くない？」


それってつまりはシカトでしょ？


「煩い」


ベッドに転がって雑誌を読んでいるアキをジト目で見詰めるけど、何処吹く風でこっちなんて一瞥もしない。

練習休みだし、予定ないし、とアキのいる愛知にフラリと来たのは良いけど、アキも偶然練習が休みだったのは良いけど、アキの寮に遊びに来たのは良いけど…


「優貴くん放置プレイ！」


初っ端から放置プレイ。
おもてなしなんて期待してなかったけど、久しぶりに会った友人に対して淡白すぎやしないかい？
繰り出した話題にだって食い付いてくれないし…。
ここ最近で一番の特ダネなのに…。


「晶大くんは俺より雑誌の方が良いのねっ！」


よよよ、と泣き真似したらやっとベッドから起き上がってくれたけど、その顔は本気で鬱陶しいと如実に語っている。

何て言うかこれは…


「あ〜…アキ？もしかして疲れてる？俺帰ろうか？」


よく考えずとも、練習に試合に来年度から入社する実業団との話しにメディア対応に、と、そりゃあ疲れてるよなぁ。
俺の入社が内定している実業団はまだ内定選手を発表していないから、呑気にしているけど。


「多少疲れてるけど、別に帰らなくて良い」

「迷惑じゃない？」

「迷惑だったら端から来させてない」

「おおう…」


デレた。アキがデレた。

思わず叫びたくなったけど、寮だし、前みたいに押さえ付けられて身長縮めたくないから、拳を握り締める事で我慢しておこう…。

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