カラフルボックス

男前なあの子(#8) ページ21

「ゆーきいいいい！」

「またやってる・・・。今日は何だ」

「Aが楽しみに取って置いたカラアゲを祐希が食べたらしい」

「子供みたいな理由だな」


子供みたいな理由と言われてもどうでもいい！
並ばないと食べられないカラアゲを漸くゲットして楽しみにしてたのに！


「祐希〜！！」


食べ物の恨みは恐ろしいんだからな！


「何でお前はいつもいつもあたしのを取るんだ！」

「お前のモンは俺のモノ。俺のモンは俺のモノ」

「どこのジャイアンだ！！」







「祐希さ〜ん、Aく〜ん」


祐希を追い掛ける道すがら、部のマネ仲間の先輩同輩後輩に呼び止められてあたし達は足を止めた。
勢いつきすぎて祐希の背中にぶつかって文句を言われたけど無視。


「はい、バレンタインチョコ」


祐希共々渡されたのは可愛くラッピングされた小ぶりな箱。


「今年はみんなで手作りしたのよ」

「へ〜、スゴイな。ありがとうございます」


って事はこのラッピングも？スゲ。


「じゃあね」


華やかな空気を残して去っていったマネさん達。


「いやぁ、可愛いねぇ。マネさん」

「お前、そういう趣味あんのか？」

「違う！単純に思っただけだっつうの」

「お前は？俺に無い訳？バレンタイン」

「あたしがバレンタインって柄かよ。
あーもう、そろそろ準備しなきゃ。祐希、今度何か奢れよ！」


確かに街の中はバレンタイン一色だ。
どこのショーウィンドウも可愛らしく飾られているし、すれ違うのは幸せそうなカップルが多い。


「マジで忘れてたなぁ」


ここん所、練習や講義が忙しくてバレンタインの存在をすっかり忘れていた。
女としてどうなんだとか思うけど、まぁ所詮製菓会社の策略の日な訳なんだが。
でも、多くの女の子達はこの日のために色々用意をしている訳で・・・。
事実、マネさんから貰った他にも昼間次々と女の子達から貰ったし。


「昔からあげるより貰う方が多かったからなぁ」


『カッコいい』 『男前！』 『男だったら付き合っていた』

そんな台詞、この人生の中で何度も言われた。
女の子から告白だってされた事もある。


「この男並の身長と、性格で男からは相手にされないんだけどさ」


女の子にモテるのが楽しかった時期もあるけど、今はちょっと空しさもあるかな。
勿論好かれるのは嬉しいんだけど・・・。
何かこの歳になると複雑なんだよなぁ。



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