カラフルボックス

2 ページ16

「ドッキリはウケたな〜！」

「思いっきりマイクに拾われてたしな」

「スクリーンにも映されてたし」


帰りのバスの中、口々にからかわれて、俺は貰ったバボちゃんを抱えて前の座席の背もたれに脳天を付けてなるべく姿を隠している。


「酔うぞ、ナギ」

「………それです！」


隣のマサさんに慰められるように後頭部を撫でられ、優しさに感動していたのも束の間。ハッ！と気付いた。

勢い良く体を持ち上げたのと、大声でマサさんが目をまん丸にしていたけど、今は申し訳ないけどそれどころじゃない。


「ナギって呼ばれ慣れ過ぎて気づかなかったんです！」

「いやいや、自分の名前に気付かないって、お前」

「だって世間一般の人にとって、ここでヤナギダと言えばマサさんだし、ユウキと言えば祐希ですよ。知名度と活躍度からしても俺ではないですよ」

「うわ、自虐的」


そうなりますって。

こないだなんて、出待ちの子から「ヤナギダ選手」って聞こえて反射的にそっち見たら「違う方だし！」「あんたじゃないって！」なんて半ば馬鹿にされましたよ？

いや、勿論そういう人達ばかりじゃなくて、俺を応援してくれている人もいるんだけど、やっぱりそういうのってインパクトが強くて記憶に残ってしまう。

世間にとって、ヤナギダ ユウキとはマサさんと祐希なのだ。


「ネガティヴ退散」

「イテッ」


後ろから長い腕を存分に活用し、俺の頭を叩くアキを振り返ってジト目を向けるけど、素知らぬ顔で俺を見てやしない。
アキに不機嫌さを伝えるように眉間にしわを寄せ、唇を尖らせていると、マサさんが慰めるように頭を撫でてくれたからまあ良いや。
マサさんに感謝しろよ、アキ。


ー

3→←ある青年の受難２(#8、12、15)男主

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す