case.17 ページ43
「マサさん…」
「何だよ」
「Aさんに何やらかしたの？」
生温い視線を俺に送り付ける祐希。
その理由は、宇佐木ちゃんが俺の顔を見るなり体を硬直させた後、文字通り脱兎の如く逃げ出したからだ。
「別にやらかしてはいない」
「やらかしてはって事は何かはやったんだ？」
日常生活では基本的に鈍いくせに、たまにこうやって鋭さを見せるよな、コイツ…。
「別に」
「あんまりいじめると嫌われちゃうよ」
「嫌われるならそれはそれで良い」
「良いの！？」
「良い」
そう言い切った俺に、祐希は「ふうん…」とは言っているがその顔は納得のひとつもしていないという顔だ。
そうだ。嫌うなら嫌えば良い。
その方がスッパリと吹っ切れて良い。
下手に取り繕われてもお互いを不幸にするだけだ。
一度踏み越えてしまった足はもう戻れない。
共に進むか、背を向けあい別々の道に進むか。
ふたつにひとつ。
「どうなるかな…」
親指でスルリと撫でた唇に未だ残る、あの時の感触。
あの時、結局宇佐木ちゃんは答えず、俺は有言実行…、その唇に己の唇を押し当てた。
触れるだけの軽いキス。
ほんのそれだけなのに、満たされた気持ちになった辺り、俺は相当宇佐木ちゃんに惚れてるらしい。
その宇佐木ちゃんと言えば、叫び声を上げるわけでも無く、俺を殴るわけでもなく、泣くでもなく、ただただフリーズしていた。
戻らないものはもう戻らない。
嫌うなら、思い出す事すらない程嫌えば良い。
自分勝手だ、一方的だと罵れば良い。
そうして俺から離れれば良い。
そうじゃないと耐えられない。
曖昧な関係なんていらない。
だって、そんな関係では宇佐木ちゃんは俺に曇った笑顔しか向けてくれないだろう。
俺はあのキラキラした子どものような笑顔が好きなんだ。
真っ直ぐな、曇りのない目が好きなんだ。
その笑顔が見られなくて嘆き悲しむのなら、いっそ宇佐木ちゃんを忘れてしまいたい。
『柳田くん！』
これからも俺のそばにいてくれるのならば、宇佐木ちゃんと笑って過ごしたいんだ。
ー
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リッカロッカ(プロフ) - ゆんさん» いつでもどれでも感想お待ちしております（笑）物語も佳境に入って来ました！遅筆な上に掛け持ちしてますが、完結はちゃんとさせますので、読んでいただけたらと思います（^人^） (2015年10月25日 7時) (
レス) id: b15315e85f (このIDを非表示/違反報告)
ゆん - またまた感想失礼します。いいところで〜！とジタバタしてしまいました(笑)続き楽しみにしています！無理なさらずに速水さんのペースで頑張ってください(*^_^*) (2015年10月24日 21時) (レス) id: 23a8fe0fb7 (このIDを非表示/違反報告)
リッカロッカ(プロフ) - ざらめさん» コメントありがとうございます！亀更新ですが、気長にお付き合いいただければと思います^_^ (2015年10月12日 0時) (レス) id: b15315e85f (このIDを非表示/違反報告)
ざらめ - すごく面白くて大好きな作品です！ 忙しいとは思いますが、続きを楽しみに待っています！ (2015年10月11日 22時) (レス) id: 1bafacbc57 (このIDを非表示/違反報告)
リッカロッカ(プロフ) - ゆんさん» 毎日チェックだなんて…！ありがとうございます！嬉しいです〜！更新への活力になります！ (2015年10月8日 20時) (レス) id: b15315e85f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：速水 | 作成日時：2015年10月1日 20時
