case.13-2 ページ35
「誕生日は?」
「4月2日です」
嫌がられるだろうかとも思ったけれど、意外にスンナリ返って来た答えに、思いつくままに質問を投げかける。
「きょうだいは?」
「高校3年の妹が1人」
「へえ、姉なんだ。意外」
「どういう意味ですか…」
「まあ、良いじゃん。趣味は?」
「読書ですかね」
「何が好きなの?小説とか?」
「面白そうと思ったら何でも読みますよ。小説から漫画からエッセイから児童文学とかも」
今まで空白ばかりだった俺の中の宇佐木ちゃんのデータが少しずつ埋まっていく感覚に、自然と唇が弧を描くのがわかった。
でも、俺はどうして宇佐木ちゃんが知りたいと思ったのだろうか。
さっき口から出た通り、宇佐木ちゃんは俺の事を良く知っているのに、俺は宇佐木ちゃんを知らないという不平等から?
「どうしてこの仕事に就いたの?」
「テレビが好きだからです」
「俺と一緒だ」
「え?」
「俺もバレーが好きだからやってる」
「知ってます。柳田くんがバレーを好きだって事、みんな知ってますよ。じゃなかったらあんなに生き生きとプレーは出来ませんし、悔しがりません」
この子は、頑固で意地っ張りで天邪鬼なのに、どうしてこうたまに物凄い素直になって、爆弾を落とすんだろう。
「柳田くん?どうかしましたか?」
「…いや。じゃあ、最後に。好きなスポーツは?」
「バレーです」
「それは取材をしているから?」
「取材をすると決まって良く見るようになったのは事実ですけれど、取材を始めて、選手のみなさんのプレーや人柄に触れて、好きになりました」
だから、取材が終わったとしても私はバレーが大好きだとハッキリ言えます。
“取材が終わったら”
その言葉が妙に耳に残った。
そうだ。俺達は仕事での付き合いなんだ。
宇佐木ちゃんは選手の俺を取材するために、仕事をするためにここにいる。
それはつまり、遠くない未来に別れがあるという事だ。
そしたら?
取材が終わったら?
お疲れ様でした、で終了?
それで、おしまい?
ー
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リッカロッカ(プロフ) - ゆんさん» いつでもどれでも感想お待ちしております(笑)物語も佳境に入って来ました!遅筆な上に掛け持ちしてますが、完結はちゃんとさせますので、読んでいただけたらと思います(^人^) (2015年10月25日 7時) (レス) id: b15315e85f (このIDを非表示/違反報告)
ゆん - またまた感想失礼します。いいところで〜!とジタバタしてしまいました(笑)続き楽しみにしています!無理なさらずに速水さんのペースで頑張ってください(*^_^*) (2015年10月24日 21時) (レス) id: 23a8fe0fb7 (このIDを非表示/違反報告)
リッカロッカ(プロフ) - ざらめさん» コメントありがとうございます!亀更新ですが、気長にお付き合いいただければと思います^_^ (2015年10月12日 0時) (レス) id: b15315e85f (このIDを非表示/違反報告)
ざらめ - すごく面白くて大好きな作品です! 忙しいとは思いますが、続きを楽しみに待っています! (2015年10月11日 22時) (レス) id: 1bafacbc57 (このIDを非表示/違反報告)
リッカロッカ(プロフ) - ゆんさん» 毎日チェックだなんて…!ありがとうございます!嬉しいです〜!更新への活力になります! (2015年10月8日 20時) (レス) id: b15315e85f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:速水 | 作成日時:2015年10月1日 20時