失う辛さ ページ9
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「実弥！！返事してよ！いないの？」
玄関の前、実弥を呼んでも返事はない。
小芭内は門を潜った時に帰っていった。
庭は、ボロボロに切り刻まれた竹で溢れかえっていた。
「実弥ーーー！！入るよ？お邪魔します」
実弥の家に来た時は、いつも勝手に入るけど、今日だけはなんだか気が引けて。
結局、勝手にお邪魔して、家の中を歩く。
拒否されたらどうしようって心の中で思うけど、歩く足は止まらない。
実弥がいそうな部屋には心当たりがあった。
廊下を抜けて、曲がった先に見えた、カブトムシの部屋。
ｰｰｰｰｰｰｰ…いた。
綺麗な銀髪がチラリと見える。
「……さねみ？」
「……は、？」
「ごめん、急に来て」
振り向いて、ギロリとこちらを睨んだ実弥が怖くて、思わず怯む。
それはまるで犬だと思って殺したものが、しずさんだと気づいた時のような顔をしていたから。
「帰れ、なんで来たんだよ」
「幼馴染の心配したら、いけない？」
幼馴染。もうそうやって言えるのかもわかんない。
けど、同時に幼馴染と自分で言った言葉にズキリと胸が痛んだ。
「何を心配する必要があるんだァ？そんな暇があるならさっさと帰って鍛錬でもしろ」
「嫌だ。ここにいたい」
そういうと実弥はおもむろに立ち上がって、こちらに向かってきた。
「ちょっと！離して！」
私の腕を掴んで、引っ張る。
きっと、帰らそうとしてるんだ。
必死に抵抗するも、力の強さで叶うわけもない。
「ほんとに離してってば！！」
思いっきり腕を振って、なんとか実弥の手を離す。
「んだようるせェなァ！大人しく帰れよ。お前がいたところで何になる。別に何も変わんねェよ！」
私の中で、何かが切れた。
「じゃあ、なに。カナエだったら変わったってこと？私だから、駄目なの？」
やってしまった、と思った。
そんなの当たり前なのに。
だって実弥はカナエのことが好きなんだから。
私じゃ代わりになるわけない。
そんなこと、わかってるけどハッキリと言われたことに傷つくのを通り越して、怒りしか感じなかった。
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作者名：ゆゆ | 作成日時：2021年2月9日 1時
