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その日から、不思議と実弥と会うことはなかった。
前までは1週間に一回は顔を合わせていたし、ひと月に2回はご飯に行っていたのに。
避けられている、と考えるのが正解なのかもしれない。
「……い、おい！話を聞け。お前は会話もできないのか」
「あぁ！ごめん！なに！？」
いけない、小芭内とご飯を食べに来ていたのにすっかりボーッとしていた。
「不死川となにがあった」
「えっ、！？」
急にそんなことを言うものだから思わず口に含んだご飯を吹き出しそうになった。
「まさか、何もないとか言うわけではあるまいな。何かがあったのは明白なんだ。さっさと言え」
目の前のオッドアイがギラリと私を睨んでいる、気がする。
小芭内は実弥と仲良いし、てっきり聞いているものだと思っていた。
私のために黙っていてくれたのかもしれないけど、それと同時に実弥にとっては話すほどのことでもないのかな、と気分が沈んだ。
実弥の次ぐらいによくご飯に行く小芭内だけど、実弥のことが好きだというのは話したことがなかった。
「私、実弥に告白したの。けど、振られちゃった」
「そうか」
「好きな人がいるって」
「……」
「ずっと、好きだったのに、10年も、好きだったんだよ？」
私の頬を、冷たい何かが伝う。
それはぽたりと机に落ちて、小さな水溜りを作った。
私の落ちた視線は、その中に、涙を流す自分の姿を写した。
「よくがんばったな。褒めてやる」
頭を暖かいものが撫でた。
すぐにそれは小芭内の手だということがわかって、余計に涙が溢れ、水溜まりが大きくなる。
普段、ネチネチうるさい小芭内が何も言わずに話を聞いてくれることが嬉しかった。
実弥に振られてからも泣くことはなかったけど、私は泣きたかったんだと、痛感した。
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作者名：ゆゆ | 作成日時：2021年2月9日 1時
