それは唐突に ページ34
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「すっかり朝だね」
「朝ってか昼だな。寝るかァ」
「そうだね〜けどまだ眠くないんだよね。おやつ食べる?」
「食う」
縁側で実弥はおはぎ、私は茶菓子を食べることにした。
素敵な朝だ。昨日の夜はお互いに鬼を斬りに行ったなんて思えないなぁ。
まぁ私は遭遇してないから斬ってないんだけど。
「なァ」
「ん?どうしたの?」
「ちょっと待ってろ」
そういうと実弥は廊下を歩いて別の場所に向かってしまった。
どうしたんだろう、急に。
パタパタと足音が聞こえて、実弥が帰ってきた。
「本当はもっとなんか雰囲気とかあるところで言うんだろうけどさ」
「う、うん…」
「買ったら、すぐ言いたくてよ。悪ィ」
なに、なんなの。
ゆっくりと差し出される、実弥の手のひらの上には、小さな四角い箱。
それは、明治時代になってから日本で急速に広まったもので、いつからか知っていた。
「俺と、結婚してください」
「…っ」
実弥のその言葉とともに、体の奥底から溢れてきた、涙が流れた。
「っはい、お願いします」
実弥の手を、指輪の箱ごと包むように握った。
実弥はようやく頭を上げた。
「泣くな、俺が幸せにするから」
「うんっ、もう充分幸せだよ」
「つけていいかァ?」
目一杯頷いた。
実弥の指先が、私の左手の薬指をとる。
先程まで箱に入っていたキラキラと輝くリングが、ゆっくりとはめられた。
「ピッタリだな」
「へへ、ありがとう。私も、つけていい?」
「あァ」
同じように、実弥の左手の薬指をとり、片方の手でリングを掴んだ。
緊張で指先がプルプルと震える。
「…できた」
まだ重なっていた指先をするりと通り、私の左手をとると、手のひらを重ね合わせた。
互いの薬指にキラリと光るリングが、とてもよく輝いて見える。
「実弥、大好き」
「俺も。死ぬまで離さねェ」
「ふふ、私も」
「結婚式、しねェとな」
「できるかな?」
「最悪2人でもやる」
「そんなにやりたいの?」
「絶対綺麗だろ?見てェ」
「うれしい、ありがとう」
「お館様には爽籟飛ばしとく」
「わかった〜」
ついに結婚かぁ〜〜
実弥と結婚できて私は本当に幸せ者だと思う。
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作者名:ゆゆ | 作成日時:2021年2月9日 1時