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「ただいま〜」
ドタドタと人の歩いてくる気配がする。
歩いてくると言うより、走ってる？
その気配は急に私の前に現れたかと思うと覆われて、前が見えなくなった。
「わっ、急にどうしたの？」
「うるせェ。遅いんだよ馬鹿が」
「あ、ごめん」
自分が任務帰りだということをすっかり忘れていた。
陽はすでに登っていて、朝になっている。
「ごめんね、蝶屋敷寄ってたの。包帯きれてたでしょ？どっか怪我したとかじゃないよ！」
「…ん、心配しただろ」
「ごめんね」
くしゃくしゃっと頭を撫でれば銀髪が顔にかかってくすぐったい。
なかなか離れない実弥に自然と笑みが溢れてくる。
「なに笑ってんだよォ…」
ぷいっと顔を背けられて、先程まで背中に回っていた腕は解かれ、離れていってしまった。
「かわいいなって」
「うれしくねェ」
「おいで」
おいでと言っても来てくれない。かわいいって言ったのがよっぽど気に入らないみたい。
「さねくん、ぎゅしてくれないの？」
ピクっと肩が揺れる。こういえば絶対来てくれるし、ぎゅーしてくれるってわかってるんだからね。
近づいてきて、再び背中に回される腕。
「ふふ、ぎゅーーー」
「…くるしい」
「いいの〜さねくんは私のだもんね？」
「あァ、Aは俺のだからな」
へへ、幸せ。
上を見上げれば絡み合う視線。
実弥の腕が後頭部に回され、自然と唇が重なり合う。
「っん、む、……」
「っは、かわいい。んな顔外ですんなよ」
「どんな顔かわかんない」
唇が離れ、実弥が愛おしそうに私の頭を撫でる。
何年経っても幸せすぎるの。
今度は私の首筋に手を添え、先ほどまで唇に啄んでいたそこは、首筋を目指して進んだ。
「ちょっと！ストップ！」
「あ？」
「忘れてた、コレつけたでしょ」
私の指指す先には赤く少し膨れ上がったそれ。
「何が悪いんだよ。Aは俺のだろ？」
「年下の子に悪影響だと思うの。無一郎なんてまだ14歳だし！」
「見せつけとけばいいだろ」
「あんた自分の弟とかにそんなこと言えるの？」
「……」
驚くほど長男な彼のことだ。きっと今頃だめだと思っているに違いない。
「…そんなに嫌なのかァ？」
「えっ」
まってまって、まさかそんな角度の質問捩じ込んでくるとは思わなかった。
恋人にそんなこと言われて駄目って言える人はこの世にどれだけいるのでしょうか。
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作者名：ゆゆ | 作成日時：2021年2月9日 1時
