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「あの鬼………
いや、なんでもねェ」
実弥は何かを話そうとして黙ってしまった。
でもきっと、私と同じことを考えているのだと思う。
志津さんも、ああいう風になれたのではないだろうか。
炭治郎という少年のように、自分が信じていれば、殺す前に、さらに娘と息子を自身の手で殺める必要はなかったのではないか。
きっと、そう思ってるんだよね…。
だからこそ、禰豆子ちゃんを自分の手を汚してまで認めたくなかった。
けど、どのみちあの暗さじゃ志津さんかどうかわからなかったし、鬼だったとしても炭治郎のように人間に戻ることを真っ直ぐに信じ、そのために行動することができたかはわからない。
実弥はきっとそこまで考えて、話すのを辞めた。
だって、あの日志津さんを手にかけたのは私と実弥なんだから。
「私、自分ができなかったこと、禰豆子ちゃんにしてあげたい」
「そうかァ」
実弥は一言だけ発して黙々とおはぎを食べはじめたけど、きっとこれだけで全ては伝わったと思う。
「帰るかァ」
「うん、そうだね」
実弥が支払ってくれて、ごちそうさま、と伝えれば頭をポンポンされる。
「へへ、実弥好き」
「んなこと言ってっと早く屋敷帰んねェとなァ」
「え」
実弥に抱き抱えられてちゅっと口づけを一つ落とすと、屋敷まで、飛んだ。
文字通りひとっ飛び。
さすがは風の呼吸…なんて感心している場合なんてなくて、向かう先は寝室。
「ちょ、うそ、ほんとに？」
「当たり前だろ。可愛いことするAが悪ィ」
「んっ…」
そういうと少し乱暴に深い口付けをし、離れたかと思うと首筋に顔を埋めた。
チクッと甘い痛みが走る。
「っは、……」
いたるところに口づけを落としながら、行為は進み、最後まで食べられた。
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作者名：ゆゆ | 作成日時：2021年2月9日 1時
