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「はいよ、お待たせ〜」
「ありがとうございます!」
優しそうなおばあさんが持ってきてくれた。
「ありがとなァ」
そう言って実弥はいつも私の頭を撫でる。
「へへ、実弥の手好き」
撫でてくれる手が心地よくて、思わず擦り寄った。
こうやって撫でてくれるところも、好き。
「わり、ついクセで。妹たちにやってたからよ」
「ううん、嬉しいからいいの」
嬉しい、なんて言いながら実はちょっぴり傷ついた自分がいる。
妹たち。そうだよね、実弥にとっては私はそんな部類なんだ。
ううん、こんなことで傷ついても仕方がない。
すでに失恋してるし、この気持ちは封印するって決めたんだから。
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「今日は一緒に来てくれてありがとうね」
「おう、任務頑張れよ」
「美味しいもの食べたからね、頑張るよ!」
楽しい時間はすぐに過ぎてしまう。
まだ任務までは時間がある。名残惜しくてばいばいができない。
どうしよう、まだ一緒にいたいのになぁ。
「あ」
不意に目の前の実弥が小さく声を発する。
その視線は私を見ていなくて、私の後ろ遠くを見ていた。
「ーーーーーーー…よォ、胡蝶」
その言葉が、とてもゆっくり感じた。
私は後ろを向く。少し遠くから歩いてくるカナエと、その後ろにはしのぶが見えた。
「カナエ、しのぶ!」
「あら、Aちゃん、不死川くん。さっきぶりね」
あぁ、敵わないな。と思った。
ふふ、と笑うカナエは可愛い。可愛すぎるのだ。
実弥の顔も心なしか嬉しそうに見える。
あぁ、見たくない。心臓がぎゅーっと締め付けられる。痛い。
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作者名:ゆゆ | 作成日時:2021年2月9日 1時