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「ーーー…み！実弥！」
「…っ！あァ、どうした？」
私の呼びかけに驚いたように反応する実弥。
きっとまた"カナエ"を見てて、私の呼びかけに気づかなかったんだ。
こんなのは毎日のこと。
仕方がない、だってカナエは優しくて、いつでも落ち着いてておしとやかで、なによりも可愛くて。
誰だって惚れると思う。
そんな素敵な女性だから、きっと実弥も好きになったんだと思う。
私みたいにちんちくりんで、カナエみたいに強くなくて、本当に柱と名乗ってもいいのかわかんないような女じゃだめだよね。
実弥はかっこよくて、誰よりも強くて、誰よりも優しい心を持ってる素敵な人だから。
「この後、あいてる？ご飯行かない？」
「おう、いいぜ」
今日は柱合会議があった。会議は本心を言えば参加したくない。
こんなことを言うのは、柱として本当に駄目なことだけど、カナエを見る実弥を見たくない。
私たちは柱合会議のあとはもちろん、会えばご飯に行く。
絶対、私から誘うんだけど。
私は自分の気持ちを押し殺して、今日も実弥をご飯に誘う。
実弥は優しいから、きっと断らない。
「ありがとう！行きたいお店あったんだ」
「またか？毎回よく見つけてくるよなァ」
私はいつもおはぎのあるご飯屋さんを無意識に探してる。
任務の帰りとか、非番の日に出かけた時とか、無意識に探してしまってるんだ。
よく見つけてくる、なんて言うけど、実弥と行きたいがために探してる。
それでも、実弥が私を好きになってくれることはない。
なんて残酷な世界なのだろう、と思う。
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「ん〜！おいしい！実弥、おいしい？」
「あァ、うめェ」
「ここね、おはぎもあるんだよ！」
「食う」
最近できて、おいしいと噂のお蕎麦屋さんに来た。
もちろんおはぎのあるお店。
チラリと横をみると、横顔が綺麗で思わず見惚れてしまう。
「今日は非番？」
「だな。久しぶりの休みだァ」
「よかったね！柱ってほんとに忙しいからね。みんな尊敬する」
「何言ってんだよ、お前も頑張ってんじゃねェか」
「んー、なんとか追いついてる、って感じかなぁ」
こうやってさりげなく褒めてくれるところも好き。
「すみませーん！おはぎひとつください」
「あいよ！ちょっと待ってね〜」
甘党を隠したい実弥に変わって、いつもおはぎを注文する。
これは私の特権、って勝手に思ってる。
私はあんこが苦手だから食べないけど。
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作者名：ゆゆ | 作成日時：2021年2月9日 1時
