溺れた魚。【Fischer's】 (ページ11)

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''事件"2 ページ11

Side シルク
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その日、俺は即座にメンバーに連絡を入れて全員でモトキから言われた倉庫へ向かった。
到着したのは連絡があってから40分後。既に辺りは暗かった。
俺だけでも先に行ってりゃ状況は変わったのかもしれない、とずっと後悔してる。

シ「っ、モトキ！優空！」

全力で走ったおかげで呼吸は乱れて肩で息をしながら閉じられた倉庫の扉を勢いよく開いた。

ダ「…何だ、よ、これ…」

絶句したダーマの声。
倉庫の中には優空とモトキが倒れていた。
モトキは頬をは痛々しく腫れさせ、口や腕や足から血を流して。
優空は荒々しく破かれた制服のシャツ1枚だけを身につけ、モトキ程ではないが体から出血していた。
嫌でも分かる。何が起こったのか。

遅かった。

ン「モトキ！？」

ンダホがモトキに駆け寄りゆっくりと抱き起こす。
俺も慌てて優空のもとへ駆け寄った。

ザ「これ、着せてあげよ？」

ザカオにパーカーを手渡され優空の体にかける。
ふたりとも息はしてる。

マ「誰がこんなこと…」

マサイのその言葉は空を舞うだけだった。

シ「優空っ？優空！」

ンダホ同様、ゆっくりと上体を起こして抱きしめた。
俺たちより幾分も華奢な体はとても冷たかった。

『シ…ルク…？』

シ「そうだよ、俺だ。分かる？」

『助けに来てくれたの…ありがと』

シ「ごめん…もっと早く来てたら」

無理に作った弱々しい笑顔は俺の心をひどく締め付けた。

マ「俺の家が一番近いから…とりあえず手当しないと」

マサイの声に全員が頷き、ンダホがモトキを、俺が優空を背負いその場を後にした。

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マサイの家につき、ふたりを着替えさせて手当をして布団に寝かせる。
心身ともに疲れたであろうふたりはすぐに睡魔に襲われたようで。

『…シルク、』

シ「ん？」

優空の隣で座っていた俺の服の裾をちょこんと引っ張り小さな声で名前が呼ばれた。

『1個だけ聞き流してほしいこと、あるの、』

シ「…何？」

『…初めては…好きな人とがよかったな、って…』

シ「っ、」

その言葉に思わず涙が零れた。
何で、何で優空がこんな目に。

シ「くそっ」

絆創膏やガーゼが貼られたふたりの顔や体、苦しそうな寝顔を見て怒りや悲しみ、いろんな感情が湧き上がった。
ダンっと思わず床を殴る。

ぺ「…ふたりからちゃんと話聞かないとね」

ぺけのその声は震えてた。