【小説】歯車は狂ったように廻る【募集企画】

6話 ロゼッタ・シェイリーン ページ6

*



「きゅーちゃん…」

幼い頃からの友達である、彼女を見つめながらそう小さく名前を呼んだ。

けれどその声は、行き交う街の人達の声によってかき消されてしまう。


さっきまで晴れていた空も、何だかどんよりしてきた。

ぽつ、ぽつ。

降ってきた雨が頬を伝う。


「ロゼ…？」


隣から聞こえた相棒兼親友の声によって、ハッと我に返る。

目の前にいる神威の姿を見て、何だか泣きそうな気分になったが今はそんな感情に浸っている時間はなかった。


隣の来栖に、「今日はもう帰ろっか」と小さく笑いかける。

その声を聞いてからか、神威は何も言わず人混みの中へと消えていった。

その姿をチラリと目の端で確認すれば、来栖の頷きを聞いて元来た道を小走りで戻る。




また前みたいに、きゅーちゃんに笑って欲しい。


そんな自分の悲しく残酷な願いが、脳裏を離れない。

無理だと分かっていても願ってしまう。

願ったらいけないのに、願ってしまうこの悪循環。



ふと空を見上げれば、雷までなっている程の天候の悪さ。

ザァーザァーと降りつける雨が、自分の心の中のように感じた。



ダメダメ、笑わなきゃ。

私が暗い顔してたら、あんりんに申し訳ないもんね…。


そう自分に言い聞かせて「雨やばいっすね！！」と言っている来栖に微笑みかける。

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