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「なんで？って思ったでしょ」
『…うん』
デザートとかおやつとか。
そういう感覚で持ってきたんじゃないってことくらいはわかる。
だけど多分考えても、私に答えは出せない。
再び私の隣に腰掛けたジョンハンが、その答えをくれた。
「今日ね、誕生日なんだ」
『あれ、ジョンハンって10月生まれじゃ…』
「俺のじゃなくてね、あの人の〜」
空気がちょっとだけ、冷たくなった気がした。
あの人っていうのは、ジョンハンの好きな人のことで。
そんな彼は好きな人の誕生日にひとりでケーキを買ってひとりで食べようとしてた…ってこと？
「高校の頃ね、あの人の誕生日にコンビニでケーキ買って、保健室に持ってって一緒に食べてたの。もちろん最初は怒られたけどね」
話を続けるジョンハン。
まただ。彼はその人の話をする時、懐かしそうに寂しそうに笑う。今もそう。
「3年間そうしてた。6月15日。毎年雨。
癖になっちゃったのか、去年も買っちゃって。今年は買わないつもりだったのに、気づいたら買ってた」
雨ってちょっと苦手なんだよねって、眉を下げて笑いながら、ジョンハンは視線をローテーブルの上に置かれたケーキに落とした。
「ほんと嫌になっちゃう。ショートケーキ見ると思い出すの、あの頃のこと」
それからジョンハンは一緒に持ってきたフォークで、ひと口分ケーキをすくう。
「だから寂しくなって、Aのこと呼んだの」
そのままそのフォークは私の口元まで運ばれてきて。自然と口が開き、上に乗っていたケーキが口の中へ転がってくる。
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作者名：るり | 作成日時：2022年2月22日 14時
