. ページ11
.
「今日何時に終わる？」
『えっ？』
「何時にバイト終わるの？」
なんでそんなこと聞くんだろうと。
ちゃんと聞こえてたくせに、思わず聞き返してしまった。
『9時…ちょっと過ぎくらい』
「じゃあ待ってるから一緒に帰ろ？」
『…え？』
予想外の言葉にまた聞き返す。
ジョンハン、何言ってるんだろう。
だって今ふたりで居るんじゃないの？ふたりで帰ればいいのに。なんで私？
「Aのこと、待ってる」
『え、なんで？だって…』
「あの人、もう帰るから」
ジョンハンがぽつりと私にそう言ったのと同じぐらいのタイミングで。
カツカツと、ヒールの音が。
甘く女性らしい香りがふわっと香った。
「あ、店員さん！」
愛嬌のある笑顔。
女の私でもドキッとした。
なんか、可愛らしくて。
そんな彼女に対してぺこりと軽く頭を下げた。
「私ちょっと先に出ますね。美味しかったです！」
『あ…ありがとうございます』
「それじゃあ失礼します。またね、ユンくん」
�爐泙燭有瓩辰討海箸蓮△�っとまた会うんだろう。
椅子の上に置いていたハンドバッグを手にしてお店の出入り口に向かう彼女に、彼はひらひらと手を振っていた。
後ろ姿まで可愛い。
そしてお店の扉が閉まったのと同時に、ジョンハンは深く息を吐いた。
『あの、えっと、』
「またAに見られちゃったね」
『ご、ごめん…』
「はは、なんで謝るの？…色々話したいから、待ってる」
『あ、うん…わかった…』
今度はその言葉をすんなりと受け入れた。
色々。どう考えても、さっきの女の人のことで。
そんな彼はあの人のことが好きなんだろう。
彼女が出ていった扉をじっと見つめるジョンハン。
その目は少しだけ、寂しさを含んでいた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 943人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：るり | 作成日時：2022年2月22日 14時
