君だけの華～another (ページ9)

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アポなしで合鍵を使って彼女の家に入るのは初めてだった。
部屋に入って、少し違和感に気付く。

いつも僕が遊びに行く時は部屋が綺麗に片付いているけど、今日は部屋着が脱ぎ散らかされ、化粧品や食器もテーブルに置いたまま。

なんとなく部屋着を畳み、食器をキッチンへ持っていくとシンクには洗ってない食器が残ってた。
最近忙しかったのかなと思いシンクの食器を洗いながら、彼女が料理してる姿を思い出す。

何食べたい？って聞いてくれて、僕の食べたいものを作ってくれる。
そんな何気ないいつもの彼女との時間を思い出して胸が詰まる。

化粧品を洗面台に片付けると、洗濯物も溜まってて、洗濯機に入れて電源を入れた。

前に僕が予定の時間より早く彼女の家に行った時、彼女が慌てて洗濯物を干していた。
「そんな慌てんでええやん？」って言ったら「彼氏家来るのに綺麗にしときたいの」って言ってた事を、洗濯物を干しながら思い出す。

・・・そっか。
いつも綺麗だったのは、僕の為だったんだ。

別れるためにここに来たのに、どうしても別れたくない気持ちが込み上げる。
僕が変われば今ならまだ上手くやっていけるんじゃないかって往生際が悪い事考えるけど、どんなに頑張っても変われなかったから、この結果になってるんだって自分に言い聞かせる。

ベッドに寝転ぶと、テレビボードに飾ってる写真が目に入ってきた。

一年前に戻れたら、こんな結末にならないようにするのにな。
そんなくだらない事考えてみたけど、僕の中身がこれじゃあ戻ったところで一緒だな・・なんて、もう何考えてもくだらない自分を再確認するだけだった。

・・・もうすぐなっちゃん帰ってくるかな？
・・・帰ってきてほしくないな。
振られようって、覚悟決めて来たけど、やっぱり辛い。

自分が自分でなくなるほど本気で好きだった。
この先、また誰かを好きになれるかな・・・
きっともう、こんな風に自分の全てで人を好きになる事はないな。

そんな事考えてたら、いつの間にか寝てしまってて、夢の中でなっちゃんがずっと僕を抱きしめてくれてて、夢の中の僕は、付き合った頃の僕みたいになんの不安も感じないで幸せな気持ちでなっちゃんに抱きしめられてた。

嬉しくて悲しくて、僕の意識と関係ない所で涙が零れてた。

next・・・・・

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