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少し言葉に詰まったのは、何て言っていいかわからなかったから。
どこって言われて返事しながら前向いたら斗亜がいたから。
「・・・どした？」
私の様子がおかしかったのか、数メートル前に居る斗亜がこっち向かって歩きながら電話越しに心配してる。
「・・・ごめん。・・なんもない」
「なんもない顔ちゃうやん・・なんかあった？」
目の前の斗亜が私の顔を覗き込むけど、斗亜の質問になんて答えて良いのかわからなくて代わりに涙が零れた。
ごめん斗亜。
私まだ全然、弱いままだった。
斗亜が無言で涙を拭ってくれてて、斗亜の手の温かさに少し落ち着いた。
「なんかあってんけど、今上手く言えへんから・・・後で言う」
私の言葉にキョトンとした顔をしたけど「なんやそれ・・捺香器用やな」って笑って「もう昼からサボるわ。・・・USB風雅に渡して帰ろ？」
USBを斗亜に渡すと、斗亜は風雅くんに電話した。
携帯を持ってない方の手でゆっくり指先を絡めてきたから、キュッて握り返すと、耳に携帯を当てたまま私を見てニコって笑ってくれた。
その顔が、やっぱりなんか大人になってて、少し安心して私も緩く笑った。
斗亜の後ろの方に、さっきの吉川さんが見えた。
彼女は私に気付き、ペコっと会釈をした。
条件反射で私も会釈すると、斗亜が誰にしてんの？と言わんばかりの顔をして、自分の後ろを振り返った。
振り向いた斗亜の顔は驚いていて、風雅くんと電話で話しながら目線は私に、何で知ってんの？って言ってた。
「・・・え？何で知ってんの？・・・えっと・・名前わからん」
電話を切った途端、驚いた声で質問される。
名前わからんって・・。
「・・・さっき大学入り口で迷ってたら、そこまで案内してくれた・・・」
無意識に繋いだ手に力が入って、そんな私に勿論斗亜は気付く。
「・・・あの子になんか言われた？」
小さく頷く私に「そっか・・・不安にさせた？何もないで？」って続く言葉にも小さく頷いた。
「連絡先聞いたら、彼女いるからって断られたって言ってた」
ポツリと溢すと「・・・いきなり初対面でそんな話なったん？・・・そら不安なるよな。ごめん」
頭を掻きながら謝る斗亜に「ううん。不安・・ちゃうけど・・・なんやろ。・・ビックリしたの方が近いかな」って答えながら、ぼんやり彼女の方へ視線を向けると、彼女はもう居なかった。
next・・・
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作者名：あお | 作成日時：2023年6月27日 11時
