巡り合う偶然の中の奇跡

blue ページ45

渡辺翔太





思わぬところで関西弁を耳にすると、頭に康二が浮かぶのは俺だけじゃないと思う。





曲がり角を曲がる直前にぶつかってきた女の子が、ぶつかった拍子に携帯を落とした。
身体を少し曲げて拾ってあげると、急に女の子が抱きついてきたから驚いて女の子の顔を見ると「あの・・・すいません、私の事隠してもらえませんか？」と関西のイントネーションの切羽詰まった声でお願いしてきた。


言葉のイントネーションが関西弁だったから、その瞬間、俺の頭には？マークと康二が浮かんだけど、ここから見えない曲がり角の奥で何人かの足音が聞こえて、咄嗟に着ていたロングコートを広げて彼女を包んで抱きしめた。

包んだと同時くらいに曲がり角から男性が３人やってきて、チラリと俺を見たけど、そのままフロアの方へ向かっていった。

包んだ瞬間身体を反転し背中を向けた自分の機転に自画自賛しながら、おそらく俺のコートの中の彼女はさっきの男達から助けてほしかったんだろうと思い「・・男３人、向こう行ったよ？」とコートの中の彼女に声を掛けた。


返事が無いけど、とりあえず抱きしめていた腕を緩めた時、拾った携帯を手に持っていたのを思い出して何気に携帯を見ると、知らない間に通話ボタンを押していたようで通話画面が表示されていた。



慌てて彼女に携帯を渡そうとしたけど、持ち方が悪かったようで指先がスピーカーボタンを押してしまった。
その瞬間「もしもし？ヒナ？もしもし？何か言うて？どないしたん？」って、よくよく聞きなれた関西弁が聞こえて思わず「・・・え？康二？」って返事してしまった。

「・・・・は？・・・え？しょっぴー？・・何で？え？どういう事？」
「え？・・・どういう事ってか・・・・え？」
「なんでヒナの携帯にしょっぴーが出んねん？何？どういう状況？今どこ？」




この状況に俺も康二も理解できてないけど、いつも以上に捲し立てて早次に質問する康二の声は明らかに苛立っていて、携帯の持ち主はヒナって名前で、確か康二の彼女の名前がそんな名前だったと思い出す。


「あーー・・康二？落ち着け？・・・・いろいろあって、誤解があるけど、今はクラブJに居る」


現在地を伝えた瞬間「なんでクラブにヒナがおんねん・・・直ぐ・・・１０分で行くから」と一方的に言って電話が切れた。







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