25 ページ25
25.
「来月の公演で急な降板があって、イメージが合うからって。・・一応テストしてくれはるねんけど・・・こんな出会いあるなんて思わへんかった」
嬉しそうに話すヒナちゃんの声を聞いてると、とりあえずマネージャーへの怒りは治まったけど、意外な展開に正直驚いた。
「踊りも見てへんのに声掛けられるって、なかなか無いで？・・・凄い事やん？役のイメージにピッタリやったんやな」
「そうやねん。めちゃくちゃ嬉しい。・・・康二くんありがとう」
お礼を言われて「え？俺なんもしてないで？」と返すと「でも、康二くんが今日あんな凄いライブ観においでって誘ってくれへんかったら・・・無かった縁やで？」やから康二くんのおかげやって弾む声でヒナちゃんが返してきて、本当は少し複雑だけど僕も嬉しくなった。
「それはヒナちゃんの日ごろの行いがええからやわ。・・・ヒナちゃんの良い一歩になったらいいな」
「・・・ありがとう。・・・やし、しばらく康二くんに会えへんけど頑張るわ」
言ってる言葉は残念そうだけど、やっぱりヒナちゃんの声は弾んでる。
「・・・来月の公演で、急な出演やったら、終わるまで忙しいな」
「終わるころは年末やし・・・康二くんも忙しい時期やね」
そう言うとどちらも沈黙が続く。
「公演、どこかで観に行くわ。絶対」
「・・・うん。どこまでできるかわからんけど・・・精一杯頑張る」
「寂しかったらいつでも連絡してな？・・何時でも迎えに行くわ」
「・・・やっぱり康二くんって、私に甘いよな？」
「ヒナちゃんだけにしかせーへんで？・・・あかん、俺の方が寂しくて勝手に迎えに行ってまいそうやわ」
そんな風に飾らない正直な気持ちを伝えられる関係が嬉しくて、話しながらもヒナちゃんが彼女で良かったななんて思ってた。
ヒナちゃんが正式に出演者になってから、公演が始まるまで全然会えなかった。
僅か３年のダンス歴の彼女がプロの舞台に立つという事は、想像よりも簡単な事じゃなく、ヒナちゃんは毎日遅くまでレッスンをこなしていた。
基礎はしっかりできていても、プロの舞台での魅せ方はまた違うものがあって、それをわずか３週間で身に着けるのは容易な事じゃない。
ましてや、いま日本でもトップレベルの劇団の舞台の基準は高く、泣き言言ってもいいレベルだけど、レッスンの合間のヒナちゃんの連絡からは一ミリも泣き言なんてなくて、彼女は心の底から表現者なんだなと、僕の方が逆に教えられた。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 83人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
山西 陽朔 - あなたのような才能ある方は、南無妙法蓮華経と唱えて仏となり幸せな人生を歩んでくださいね (2023年4月30日 17時) (
レス) id: aaea05e353 (このIDを非表示/違反報告)
山西 陽朔 - あおさん、南無妙法蓮華経と唱えればあなたは仏になれます。 (2023年4月30日 17時) (レス) @page1 id: aaea05e353 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あお | 作成日時：2023年4月28日 11時
