僕の描く未来 (ページ6)

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「・・・私は西村さんの事全く知らないんで、その・・・どうこう聞くのも変ですけど・・・彼女さんと別れた事、西村さんはどう思ってるんですか？」

初夏の入り口の２１時過ぎは昼間に比べるとまだ少し肌寒くて、薄手の綿素材のカーディガンは簡単に風を通す。
彼女の質問は、あまり考えたくなくて避けていた俺の心の隙間を衝いてきた。

透子もだけど、今までの彼女がどんなこと考えてるとか、俺とどうしたいとか、考えた所で俺じゃないし他人の気持ちなんか考えてもわかんないからあまり深く考えてこなかったし、自分がどう思ってるかさえも考えるのが尚更面倒で、今までもたいして深く考えてこなかったのに、どう思ってるって聞かれても答えなんかない。

だけど、心の隙間に刺さった彼女のストレートな疑問はピンポイントで俺の聞かれたくない部分を刺してきたような感覚だった。

彗ちゃんに対して考えても考えても何にも答えが見つからなかった８年前に、他人の事を深く考えるのを止めてしまったから、そんな質問されても正直困ってしまう。

「あ・・・・ごめんなさい。ほんと私には関係ない事なんで、何でも良いんですけど・・・ただ、西村さんがどっちの気持ちでいるのかわかんなくて・・」

俺が多分難しい顔して言葉を発さないから、答えにくい事を聞いてしまったと思わせたようで、長本さんが慌てて謝ってくる。

「あの・・・彼女と別れて良かったぜ！・・なら、そのテンションでいようかなって。・・・別れてショック！・・だったら神妙にしようかなって・・・ほんと、それくらいの質問だったんで・・・あの・・そんな悩まないで・・ください」

長本さんにそこまで言われて、やっと彼女の立場になってこの状況を考える事が出来た。

ただのバイトの先輩で、しかもほんの数十分も会話してないくらいの、何ならまだ全然知らない赤の他人の修羅場に遭遇してしまった状況で、今、どう接したら良いかわからない彼女の精一杯の気遣いに俺は真面目に考えすぎてしまっていたようで、更に彼女を困らせてしまっていた。

「マジでいらん気使わせてごめんな？・・・もう別れようって思ってたから、全然気にせんといて？」

そう言ってちゃんと目線を合わせて緩く笑ってみせると、気まずそうだった彼女もようやく緩い表情を見せてくれた。

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