20 ページ20
・
ちょっとぎこちなかった渚ちゃんも気づけばいつも通りで、私も普段と変わらない態度でいたけど、ずっと心の中はモヤモヤしてて、拓哉くんのふわふわした緩い笑顔がずっとチラついてた。
休憩室で帰り支度をしてると渚ちゃんが「お疲れ様―」って、いつものように挨拶してくれたから私も返事をすると、渚ちゃんが何か言いたそうにチラッと私を見てるから「・・・どうかした？」って誘導するけど、渚ちゃんは慌てて「ううん・・・またね」って、それだけ言って先に店を出た。
真佑と話した会話を渚ちゃんは知らないから、きっと色々思う事があるのかもしれない。
でも、何も聞かれてもないのに「拓哉くんとは何の関係も無いよ」とは、なんとなく言いにくかった。
渚ちゃんも拓哉くんの事が好きって聞かされてしまったから、なんとなく勝手に気まずくなってしまうのは仕方のない事かなって思う。
スッキリしない気分で店を出て駅へ向かって歩き始めた所で「長もっちゃん」って、彼しか呼ばない私のあだ名が聞こえて慌てて振り返ると拓哉くんが立ってた。
なんとなくシュンってしてて、年上なのに全然そうは見えない顔で私を見てくるから、何でか私の胸がキュッて締まる感じがする。
さっきまで拓哉くんの事残念な男って思ってたのに、そんな顔されると可哀想になって許してしまいそうになるのは、きっと私が拓哉くんを凄く好きだからなんだなって、子犬みたいな顔してる拓哉くんを見つめながらそんな事思ってた。
私が何も言わないからか拓哉くんも居心地が悪そうで。
でも、そんな顔して私のバイトが終わるの待ってたって事は、さっきのメールで要件が済まなかったからなんだと思うと、拓哉くんからの切り出しを待った。
「あのさ・・・・俺さ・・最低な事したのに覚えてへんとか・・・ほんまに・・ごめん」
そう言ってペコって頭を下げる拓哉くんは、本当に困ってるような表情で、私に対して申し訳ないって本気で思ってくれてるように見えた。
きっとこれは拓哉くんの本心なんだと思うけど、いろんな拓哉くんが居すぎて、本当の拓哉くんがよくわからなかった。
「・・・・・全部は思い出せへんねんけど・・・・初めてやって・・・言ってた気がして。・・・やのに、あんなんが初めてやったん・・・めっちゃ申し訳なくて。・・・・気にしてへんって言うけど・・・・・俺は気にする。・・・・お前が言うなって思うかもしれんけど・・・」
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 35人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あお | 作成日時：2024年2月21日 16時
