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しばらくお互い何か話すわけでもなくただ抱き合っていると廊下から彼を呼ぶ渚ちゃんの声が聞こえて、ふと、私より先に拓哉くんとキスしてた渚ちゃんを思い出し、我に返るように拓哉くんを突き飛ばすかのように離れると、急に体を離された拓哉くんは一瞬驚いた表情を見せたけど、スッと立ち上がって休憩室を出て行った。
拓哉くんが廊下に出た事で渚ちゃんは休憩室まで来ることは無く、そのまま元来た廊下を２人で戻っていった。
1人になった休憩室で今起きた出来事を振り返ると、急に恥ずかしさが込み上げて思わず両手で頬を覆った。
さっきのは一体何だったんだろう？
拓哉くんはどういうつもりであんな事したんだろう？
だけど冷静になって考えると少し酔ってた拓哉くんのおふざけというか、からかわれただけってのは、流石に恋愛慣れしてない私でもわかって、さっきの拓哉くんの行動に何の意味もないって思うと私の気持ちを弄ばれただけで結構ショックだった。
何とも言えない気持ちで皆の居る席に戻ると相変わらず皆楽しそうにワイワイしてて、拓哉くんと渚ちゃんは私が席を立つ前と同じようにベタベタひっついて甘い空気を出していた。
もうそんな２人は見たくなくて、さっきの席から一番遠い席に戻ってワイワイしてる輪に混ざる。
酔った勢いでキスするとかのリア充な大学生のノリについていけない私は密かに傷ついて、拓哉くんの事好きって自覚したものの、もう拓哉くんに近づくのをやめようって思った。
アイドルみたいな見た目に惹かれたのはあるけど、チャラそうに見えてふわりとした優しさは嘘じゃないんだろうなって思ってた。
モテるだろうし恋愛慣れしてそうだったけど、あんな風に人の気持ち弄んで泥沼に引きずり込むような人だと思わなかった。
これ以上拓哉くんに近づいたらきっともっと傷つくんだろうな。
そう思うと、恋愛慣れなんてしてない私には随分ハードルの高い相手だった。
だけど、彗って呼ぶ拓哉くんの優しい声を思い出すと、めちゃくちゃ胸が痛くなって苦しくなってしまうから、もうすでに何事もなく憧れで終わる事はできないんだろうなって心のどっかでわかってた。
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作者名：あお | 作成日時：2024年2月21日 16時
