7 ページ7
２．
月日が経つにつれ、良い思い出にもなるし幸せでいて欲しいって思う。
それと同じくらい、未だに胸の奥は苦しくて痛い。
終わった事なのにいつまで悲しんでるんだって、自分でもそう思うけど痛くて悲しいものはどうしようもない。
擦り傷のような恋の痛みは、そこにある事を主張はしないけど、いつまで経っても治らなくて、ただただ彼の居ない毎日を過ごしてる。
最後に優しい顔を見せてくれた斗亜は今どうしてるんだろう。
あの日以降の私の中の斗亜は更新されることは無くて、今斗亜がどんな風に生きて過ごしてるのかもわからない。
そんな事、本当は考えているけど、誰にも言えない。
今でも斗亜と連絡を取ってる拓哉も私の前で斗亜の話をしない。
みんなが斗亜の事を話題にしたのって、入学式に斗亜が居なくて初めて斗亜が外部入学したことをみんなが知った時くらいで、その後はそれぞれ新しい新生活を過ごしていって、過去の友達の話題なんてそうそう出てこなかった。
斗亜と過ごした高校生活を過ぎて、斗亜のいない新しい新生活の初日は桜が満開で綺麗だった。
晴天の青空が広がる頭上のもっと手前で白に近い薄い薄いピンクが儚くて綺麗で、そんな儚いものを見るとやっぱりあの人の優しい顔を思い出してしまって泣けてくる。
全然癒えない悲しみに自分も正直疲れてて、せめて彼のいない新しい環境は嬉しい事が待ってたらいいなって、そんな事思って桜を見上げてたら、大きく桜の木が揺れた。
少し前に居た人が思い切り吹いた風の被害を受けて桜の花びらが彼の頭上に降る。
だけど彼は慌てる様子もなく、ゆっくりと自身の身体を掃って花びらを落とす。
その仕草が優しくて、思わず残っている彼の頭上の花びらに触れた。
なんか映画のワンシーンみたいだけど、頭の中は未だ忘れられない彼の事を想ってて、自分の時間を生きてないな・・・・なんて思いながら花びらを纏ってた目の前にいる彼の目を見つめてた。
こんな風に言うとドラマのような運命の出会い・・・とかに見えるけど、ただの何気ない日常のワンシーンにしか過ぎなくて、せっかくの新しい毎日の一歩なのに気分は儚い桜のように淡くて脆かった。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 21人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あお | 作成日時：2024年2月5日 16時
