23 ページ23
・
・・・・・・・・・・・・・・・
待ち合わせの時間より少し早く着いたから近くのカフェに入ってオーダーの列に並ぶと、微かに懐かしい匂いがして思わず列の前に並んでる人に目を向けると斗亜だった。
「え・・・斗亜？」
まあまあ混んでる店内は雑音のようにいろんな所から会話が飛び交っているけど、呟くように口にした名前は前の人に届いたみたいで、ふわっと頭を揺らしたかと思ったらゆっくり後ろを振り返ってきた。
振り向いた斗亜が私を認識して一瞬目を見開いたけど苦笑いのような顔をして「誰か思ったわ・・・久しぶり」って声を掛けてきた。
向かい合わせに座る斗亜をチラッと見ると全然変わってないように見えるけど、高校時代はカジュアルだった私服も少し落ち着いたものになっていて、でもそれは今日がクリスマスで斗亜もきっと彼女とデートなんだろうと思うと少し切なくなった。
先にオーダーして飲み物を受け取った斗亜が黙ったまま私が飲み物を受け取るのを待ってて、なんとなく促されるように一緒に席に着いたけどお互い最初の一言が出なくて黙ったまま。
大学どう？とか、元気してた？とか、とりあえず何か話そうと思ったら「連絡先とか全部消してごめんな？」って先に謝られて、口に出そうと思った言葉を飲み込んだ。
斗亜の言葉に対して何て返して良いかわからなくて黙って首を左右に小さく振ったけど、斗亜の表情はなんとなく辛そうだった。
もう二度と会う事無いって思うくらいだったから、久しぶりに会った斗亜に謝られるなんて思わなかったし、そんな顔されるとも思ってなかった。
「俺さ、自分の事しか考えてへんくて、麻美の気持ち・・・傷つけるだけ傷つけて逃げたんやけどさ・・やっぱずっと引っ掛かってて。・・・・でも自分が楽になりたいから謝るんも違う気がするから、麻美が聞きたくないって思うなら・・・もう謝らへんし」
何とも言えない表情で私を見てた斗亜がほんの少し視線を下に逸らして、躊躇いながらそう話してくれた言葉にも何て返して良いかわからない。
だけどここで斗亜と話さなかったら、私もきっと胸の奥の奥がつかえたままな気がした。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 21人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あお | 作成日時：2024年2月5日 16時
