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「谷口さん、最近なんか嬉しそうですね？」
思わずそう聞いてしまったのは、ブライダル業界の繁忙期真っただ中の秋の終わり。
みんな連日の挙式披露宴で疲労した顔をしている事が多いのに、谷口さんは出会った夏終わりの時よりももっと笑顔でキラキラしていた。
「え・・・そう？特になんかあったわけちゃうけど・・嬉しそう？」
「はい。・・・俺がバイト始めた時よりもなんか嬉しそうなニコニコな顔な印象です」
「ほんまに？・・・前までどんよりした顔してた？」
「あ、いや。元々ニコニコされてたけど・・・気のせいですかね？」
きっと本当に何にもないんだろうけど、谷口さんがニコニコしてると疲れてても周りの人もつられて顔が緩くなってる気がするから、凄いなって思ってた。
そう言うと谷口さんは嬉しそうな顔を更に嬉しそうにした。
「そういうの、素直に言ってもらえるん嬉しい。そう言われて私ももっと元気になれるわぁ。・・・連日忙しいのにバイト入ってくれてほんまにありがとうね？」
「西村くんに慣れたら楽なバイトやって聞かされてたけど・・・・騙されました」
笑いながら冗談を言うと「拓哉そんな事言うてたん？・・・明後日からの３連休人足りひんしバイトさせよかな」なんて言って笑う谷口さんに「でもほんまに人足りひんし、谷口さん毎日帰るん遅そうですけど・・・嶋��くん心配してません？」って、つい聞いてみると「あぁ・・最近遅すぎて実は昨日怒られたんよ。・・・でも仕事やし仕方ないやんね？」
口調は拗ねてるような愚痴を言うような感じだけど顔は変わらずニコニコしてるから「怒られた割にはニコニコですね」って指摘すると「え、そんなに私笑ってる？・・・怒られたんやけど、今日から何もない日は迎えに来てくれるって・・・言ってくれて・・・・」
ごめん、ちょっと嬉しくて浮かれてたんかも。
少しだけ顔を赤らめて、はにかんだ笑顔で惚気る谷口さんを見て、なんかこっちまで照れてしまうような気持ちになるくらい嶋��くんの事が好きなんだなって伝わる。
これは誰も入り込む隙間なんてないなって思うと、無理に笑顔を作る麻美ちゃんが浮かぶ。
そしてやっぱり疑問が浮かぶ。
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作者名：あお | 作成日時：2024年2月5日 16時
