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一生懸命言葉を考えて話す素振りで、紗綾の言いたい事はなんとなく伝わったし、その気持ちが嬉しくて思わず顔が緩む。
「うん・・・わかんで?・・・そう思ってくれてるんやったら・・俺も嬉しいってか・・・安心ってか・・・」
「・・・・・一緒に居て今までより楽しいって思ってんで?それに・・・考えたら斗亜ってずっと私に優しかったなって。・・・風雅とは、やっぱりずっと一緒やったし、そういう意味では前みたいに仲良くしたいな・・・・とは思ったりするけど、ほんまにどっちでもって感じ?無理に関係修復したい・・・とまではいかへん感じ・・・かなぁ?」
多分俺が気にしてた事もわかった上で気持ちを伝えてくれた事に素直に嬉しいと感じて、隣に座ってた紗綾の腕を引っ張って抱き寄せる。
付き合ってからも特別恋人らしい事をするような空気にならなくて、外で手を繋いだりする以外紗綾に触れる事は無かったけど、それはきっと俺自身が紗綾に対して付き合う前と変わらない壁を作っていたんだと思う。
後で自分が傷つかないように。
「俺さ・・・・思ってる以上に紗綾の事・・好きっぽい」
「・・・・ぽいって何よ?・・ちゃんと好きって言うて?」
急に会話が恋人っぽいそれになって、さっきまでの変わらない関係が自分でもわかるくらい変わるのを感じた。
「・・・・好き・・・やで」
「うん・・・私もちゃんと・・・好きやで?」
今更のようなお互いの告白に恥ずかしくなって、抱きしめていた力を緩めて距離を取ろうとしたら、紗綾からきつく抱きしめられて胸がいっぱいになる。
「好きになってくれて・・ありがとう」
そう聞こえて、その言葉にはいろんな想いが込められてるのがわかって、堪らずそのまま抱きつく紗綾の頬に手を添えると、ゆっくり紗綾がこっちを向く。
そのままどちらともなく顔を近づけていって、俺達は初めて唇を重ねた。
嬉しさと愛おしさが入り混じったキスをしながらも、本当はそれでもまだ心のどこかがざわついていて、この言いようのない感情はいつになったらきれいに消えて無くなるんだろうって、そんな事を思いながらも、できたら目の前の紗綾がずっと俺の隣に居てくれたらなって、既に居るのになんだか紗綾を遠くに感じてしまって、重ねた唇を食べるように更に深く重ねた。
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作者名:あお | 作成日時:2024年1月9日 17時