7 ページ7
・
なんだかんだ言って萌と付き合って一ヶ月過ぎて、お試しって言ってたけどそれに触れることなく付き合っている。
本当の事を言うと萌が好きかどうかはよくわかんない。
こんな風に合理的にお互いの関係性を積んでいって付き合うのは初めてだから正直彼女に惹かれているのかわからないし、俺の彼女に対する感情が何なのかは今までのカテゴリーにないけど、一緒に居るのは嫌じゃない。
最初は紗綾の代わりみたいで萌に失礼な気がしていたけど、萌が言ったように紗綾は紗綾だし萌は萌だ。
そう思うようになってからは、ふとした瞬間に紗綾と見間違う事はあるけど、勿論それを口にする事も無いし、胸が痛くなる事も無い。
今までにない穏やかな空気が居心地良くて、なんだか俺じゃない気分になる事もあるけど、これはこれで今まで知らなかった俺なんだなって思うと、そんな風に思わせてくれた萌の事が愛おしく思う事もあった。
紗綾と関係を切ってから三回ほど紗綾を見かけた。
違う高校へ行ってからは隣に住んでてもバッタリ会う事なんてあんまりなかったのに、関係が切れてからの方が偶然に会うなんて、なんか皮肉。
一回目は斗亜と一緒だった。
並んで歩く2人なんて今までも何度も見てたのに、関係性が恋人同士になった途端、2人の雰囲気がそれっぽく感じて何とも言えない気持ちになった。
二回目は家の最寄りのコンビニから出てくる紗綾を見かけた。
俺も紗綾も帰る道は一緒だし、このまま歩いてると紗綾に見つかるから、紗綾がコンビニを出た後俺はコンビニに入って２０分は出れなかった。無駄な時間だった。
三回目はこたちゃんと映画に行った時、歩いてる少し先に友達を歩いてるのが見えた。
俺らと紗綾達の間にはたくさん人がいて、その距離がもう届かない俺と紗綾の距離に見えて急に苦しくなった。
どんなに悔やんでももう戻らないから、この届かない距離を再び縮める事は不可能なんだと、少し先の紗綾のフワフワした笑顔を見てそんな事を思った。
俺に紗綾を自分のものにしたいって気力がまだあったら、この状況になってても、もしかしたら頑張ったかもしれない。
だけど俺はきっと最初から紗綾を自分のものにする気が無かったんだなって、漠然と感じた。
ずっと大事に想ってたのは本当。
女として好きだったのも本当。
気付かなかったけど、俺は最初から自分の気持ちを伝えても紗綾を自分のものにするっていう概念が無かったのかもしれない。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 65人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あお | 作成日時：2024年1月9日 17時
