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込み上げる自分の感情を堪えて絞り出すようにそう言うと、彼女はやっぱりジッと俺を見つめたまま口を開く。
「そっか・・・。でも、理由聞かずにわかったとは言いたくないし・・・なんでそんな辛そうな顔なんか教えてくれへん?・・・・・言いたくないんかもしれんけど、それこそほんまの風雅くん知って納得したい」
俺の知ってる紗綾だったらきっと言わないような言葉が彼女から聞こえて、彼女は紗綾に似てるけど紗綾じゃないってわかっているけど、どうしても紗綾を重ねてしまう。
「・・・・・・俺の好きな子に似てんねん。・・・・・その子の事忘れられへんのに似てるあんたと付き合うんキツい。・・・・最低な事言うてるんわかってる。けど・・・ごめん」
正直な思いを伝える俺をやっぱりジッと見つめたままで、お互いの間に長い沈黙が流れる。
「紗綾ちゃん?・・・私会った事無いけどさ、有名やし知ってる。し、風雅くんみたいに紗綾ちゃんに似てるって元カレに言われたことある・・・・」
そう言いながらフッと視線を逸らして微かに俯く彼女を今度は俺が見つめる。
「似てるって・・・言われても私は私やし。・・・紗綾ちゃんは紗綾ちゃんやのに、そんなんで比べられても知らんわってなる。・・・風雅くんと紗綾ちゃんが幼馴染なんて知らんかったし、そんなつもりで私出会ってへん。・・・・・例え似てたとしても、もっと私の事ちゃんと知ってから振ってほしかった」
一気に話す彼女の言葉にはなんとなく怒りが籠ってる感じで、聞いていてさっきと違う痛みが胸を締め付けた。
そうして再び俺を見てきた彼女の顔は当然だけど怒っていて、でもなんか綺麗で格好良かった。
「忘れられへんのやったら、ちゃんと気持ち言うたら?そんな中途半端な気持ちでいても忘れられへんのちゃう?」
「・・・・・・・ほんま、その通りやわ。・・・・誰かと比べてごめん」
急に説教されたけど不快にも感じなくて、逆にそんな事わざわざ言ってくれる所に彼女の人柄を感じて、素直に謝るしかできなかったし、なんか嬉しかった。
「でも・・・風雅くんって、ズルい男じゃないんやね。・・・・そういう所、格好良いって思うよ?・・・・・・・・じゃあ」
そう言って俺の前から去ろうとする彼女の腕を思わず掴んで出た言葉が「ごめん。・・・振り回してばっかやけど・・・もっと萌の事知りたい」だった。
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作者名:あお | 作成日時:2024年1月9日 17時