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大事な幼馴染って普通に言えるようになった俺にきっと斗亜は安心したと思う。
俺も紗綾もそこは変わらないのに変に誤魔化すってか隠そうとするから余計な疑いを持たせてしまうってわかったから。
だけど本当はさっきの斗亜の言葉にちょっと焦った。
俺が斗亜の気持ちを試した事、バレてたから。
普通の幼馴染でも友達でも家族でもない俺らの関係だけど、それはそれで合ってるけど、今更だけど、昨日斗亜が引いたら紗綾の事取り返そうって、本当は思ってた。
幼馴染としての紗綾を手放せたけど、そうなったらそうなったで、ちゃんと紗綾が欲しいって、今更思ってしまったから。
だけどもう時間は戻らないから、斗亜と付き合ってるのを無理矢理壊すつもりもないし、自分の気持ちを押し付けようとも思わない。
だけど、昨日斗亜が真っ直ぐに俺を見てその視線を逸らさなかったのを見て、やっぱ負けたって、そう思った。
前に斗亜から、紗綾狙って良いか?って聞かれた時、俺はその視線から目を逸らした。
後で言うても返さへんで?って聞かれた時、俺は駄目だって言えなかったのに、斗亜は普通に殴ってきた。
紗綾を想う気持ちが負けてるなって、昨日の斗亜を見てアッサリ引いてしまった俺にもう勝ち目なんて無い。
だからこの気持ちは大事にする。
どうせ忘れようって思っても捨てようって思っても無理だってわかってるから。
この気持ちがいつか、振り返った時に大事な幼馴染を想う気持ちに変わってたら、それで良いや。
産まれた時から隣に居てずっと一緒に育ってきたから、特別にならないわけがなかった。
少し距離のある幼馴染だったなら、ちゃんと幼馴染になれたと思うし、友達にも恋人にもなれたかもしれない。
一番、家族に想う気持ちが近い気がするけど俺と紗綾は家族じゃない。
いっそ本当に兄妹だったら良かったのに。
一緒に育ったのに結局俺と紗綾は他人だから、家族にもなれなかった。
ただ俺は、これからも紗綾が楽しく居てくれたらそれで良い。
俺のものにはならなかったけど、いつまでも一番大事な特別に変わりはないから。
Fin
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作者名:あお | 作成日時:2024年1月9日 17時