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俺の苦笑いを見て更に「おばちゃんしょっちゅう風ちゃんち居るで?でも風ちゃんいつもおらんやん」って笑って言うから「やから俺も紗綾もそういう年頃ねんて。・・・でも、おばちゃんが呼んだら俺いつでもおばちゃんに会いに行くから」
そう言ったらいつもの緩い優しい笑顔を向けてくれた。
本当に久しぶりだったから、昔話から最近の話までたくさん話しているうちに結構な時間が経っていた。
そろそろ帰るって話をすると、今日はうちの親が帰りが遅いのをおばちゃんは知っていて、晩ご飯も食べて帰れって言われ、そのままソファーでくつろいでたらいつの間にか寝てしまっていた。
昔はこんな風にどっちかの家でご飯を食べるなんてしょっちゅうで、ある時なんか、どっちかが作ってると思ってどっちもご飯を用意してなくて2家族でそのまま外食なんてこともあった。
俺のおふくろの味ってのがあるなら、俺んちと紗綾んちのご飯の味だと思う。
それくらい紗綾と一緒にご飯食べてた。
ご飯ができるまで、ずっと一緒に遊んでた。
人形ごっこが一番面倒だった。
だけど紗綾はいつも嬉しそうに人形を着せ替えたりしてて、紗綾が喜ぶから紗綾のしたい遊びをしていたっけな。
お絵描きもよくしたけど、紗綾は絵が下手くそすぎて直ぐに泣くから、紗綾の書いて欲しいのを一生懸命描いてあげた。
俺の描く絵を見て喜ぶ紗綾が可愛かった。
そんな懐かしい夢を見てた。
夢を見ながら、あぁこれは夢だなって思ってて、いろんな時代の紗綾が出てきてその頃の俺の感情が頭ん中を巡ってく。
純粋に紗綾が好きだったころの俺。
ずっと一緒に居るんだって当たり前に思ってた俺。
初めて男と女を意識した日。
誰にも渡したくないって思った日。
いつしか諦めてしまった感情。
俯瞰して一歩下がって関係性を保ちかかった俺。
誰よりも何よりも紗綾が大事だって思ったあの日の俺。
ふと目を覚ました俺の目に映ったのはおばちゃんじゃなくて、凄い無表情で携帯ゲームしてる斗亜だったから、俺の心臓は確実に一回活動を止めた気がした。
でも実際は俺の心臓は普通に動いてて、目だけ開けて斗亜を認識するのと同時に、視線の気配に気付いた斗亜が「あ、起きた」って呟いた。
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作者名:あお | 作成日時:2024年1月9日 17時