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家に帰った俺を迎えたのがダイニングテーブルにあったそれ。
小さい苺のケーキと誕生日プレゼントであろう箱・・・の上に見慣れた丸っこい文字で書かれた俺宛の手紙。



毎年お互いの誕生日にはプレゼントを交換して、紗綾が頑張ってケーキを作ってたけど、こんな関係性になった今、俺は紗綾に対して何も用意してなかったのに、紗綾は例年通りにケーキをプレゼントを用意してくれていた。



嬉しいような嬉しくないような、なんとも微妙な今年のプレゼントを手に取るでもなく突っ立ったまま眺めてると母親が、紗綾ちゃんはほんとあんたのこと好きやねぇーなどと、息子の騒ついた感情を軽く抉ってきた。


食い物に罪は無いのでケーキは美味しく頂いた。
普通に美味しかった。


残ったそれをそのままゴミ箱に投げ込みたい衝撃に駆られるが、そんな事できるはずもなく、部屋の机に放り投げた。






開けれない、開けたくない。手紙なんか破り捨ててしまいたい。

だって何が入っていても何が書かれてても俺の望むような答えが紗綾から貰えないのはわかりきっているから。
紗綾が好きすぎて気付いたこの感情をぶつける先もなく、ただただ消えて無くなるように耐える毎日に疲れてた。






本当は嬉しい。
こんな冷たい態度しか取らなくなったのに、こうして変わらずにいてくれて。
でもちょっとでも変な期待をすると、そのカテゴリーに属さない俺は紗綾の望むような俺でいられないから。



だからこの気持ちごと全部捨てたい。



そんな事思いながらベッドに倒れこんで横目で机を見つめるけど、紗綾のいろんな表情が頭をグルグル巡って、早く読んでって急かされてる気分になる。

結局は捨てきれない紗綾への想いが、手を伸ばせば届く机の上の手紙をゆっくり摘まんで封筒から中身を取り出した。








―――



部屋のドアをノックすると、なぁーにー?と間延びした紗綾の声がした。
きっとおばちゃんと間違えてんだろうな。
俺が来るなんて思ってもないだろうから。

俺やけどって声を掛けると速攻でドアが開いて、見上げて俺を認識すると何の前触れもなく紗綾の目から涙が零れた。
泣く時紗綾は口がへの字になるんだけど、やっぱり今日もへの字になってる。




・・・泣かんといてって紗綾の頭をくしゃっと撫でると、俺から目を逸らさずに抱きついてきて、俺は自分に無性にイラついた。







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あお(プロフ) - ぴのさん» 好みの書き方みたいで嬉しいです!感情移入しにくいかと思いますが、全作品、固定氏名で書かせていただいてます。それで良ければ最後まで読んで頂けると嬉しいです。 (10月13日 20時) (レス) id: 8b0beef4ed (このIDを非表示/違反報告)
ぴの - 文才がとても好みなのですが、名前変換はできないよう設定しているのでしょうか? (10月13日 14時) (レス) id: 8b367529bc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あお | 作成日時:2023年10月11日 17時

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