8 ページ8
・
――――――――――――――――――
紗綾に初めて彼氏ができた時の俺の衝撃は半端なかった。
中学生になっても紗綾はモテまくってて、最初はアイドルを見るようにしてた奴らもだんだん紗綾と仲良くなり、入学して半年経った頃、隣の学区だったサッカー部の爽やか王子様イケメンに告られた紗綾は完全に恋する乙女で、そんな女全開の顔なんて見た事なかった俺は、なんか息が苦しい夏の寝苦しさに似た感情を知った。
その時既にその感情が何なのかはわかってたんだけど、紗綾がそんな恋する乙女顔を俺に向けた事は当然無くて。でもそんな乙女顔させる彼氏よりも俺と遊ぶ事を優先する紗綾がなぜかいつも隣に居た。
出てきた答えが、俺は圏外って事。
そもそも生まれ落ちてからずっと隣の家で幼馴染として育った紗綾の中の俺は、それ以上でもそれ以下でもない。
彼氏というカテゴリーにそもそも入らない。
それに気付いた時どうしようもなく泣きたくなったし、この先それが変わる事の無い俺たちの関係性に、思春期に突入してた俺は逃げ出した。
変わる事の無い関係に気付いた日から俺は紗綾を避けて自己防衛した。
じゃないと紗綾の事をめちゃくちゃ傷つけるとわかっていたから。
それくらい紗綾が好きだった。
朝も一緒に登校しない、忘れ物しても貸し借りしない、向こうの方から紗綾が見えたら回れ右。
下校も斗亜や琉巧と帰るから無視、家に帰ってピンポンされても居留守、勝手に家に上がってきても部屋の鍵を開ける事も、風雅と呼ぶ紗綾の声にも反応しなかった。
二週間もすると、そのどれもに反応する事がなくなった。
放課後たまに教室の窓から紗綾と王子様イケメンが並んで帰るのをぼんやりと見つめる俺を見て琉巧が「それ、いつまで耐えれんの？」って聞いてきたけど、そんなの知らない。
紗綾を避けて3ヶ月。
最初は紗綾も戸惑ってたけど今は何もない。
たまに朝うっかり出るタイミングが一緒になったりしても、紗綾はこっち見て、風雅おはようーって相変わらず笑いかけてくれるけど、俺はそんな紗綾の顔なんて見れず通り過ぎに小さく返事するくらい。
俺がどんだけ避けても紗綾は変わってない。
多分、紗綾の中では俺という存在は最初から大した事ない程度で、俺だけが紗綾を特別に見過ぎてて、こんな風にこじれてしまったんだなって自己解釈した。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 158人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あお(プロフ) - ぴのさん» 好みの書き方みたいで嬉しいです！感情移入しにくいかと思いますが、全作品、固定氏名で書かせていただいてます。それで良ければ最後まで読んで頂けると嬉しいです。 (10月13日 20時) (
レス) id: 8b0beef4ed (このIDを非表示/違反報告)
ぴの - 文才がとても好みなのですが、名前変換はできないよう設定しているのでしょうか？ (10月13日 14時) (レス) id: 8b367529bc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あお | 作成日時：2023年10月11日 17時
