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自分の感情だけで本気で向き合えば、俺はきっと紗綾の事・・・・。
そんな事を考えて歩いてたら数メートル先に居た見覚えのある男と、なんとなく紗綾に似た雰囲気の女が腕組んでこっち向かって来てた。
絶対に紗綾に見せたくなくて、いきなり立ち止まった俺の背中にぶつかる紗綾の手を元来た方向へ引っ張っていく。
「え?ちょ・・・斗亜?どうしたん?」
手を引く後ろから紗綾の声が聞こえて「俺行きたいとこあってんけど行って良い?」って咄嗟に聞くと「あ、そうなん?良いよ?」って返ってくる。
その紗綾の声に軽く後ろを振り返るけど、向こうに居る2人は多分まだこっちに気付いてないし、紗綾も気付いてない。
少しホッとして、そのまま紗綾を引いて元来た道の曲がり角を曲がった。
歩きながら、さっき目の前に居た風雅と知らん女に怒りが湧いてきた。
いや、女の人は何も悪くない。だって俺の知らん人だから。
さっき昼からサボるって帰った風雅が、昨日の今日で他の女の子と歩いてるのがどうにも許せなかった。
風雅の紗綾への気持ちは中一から知ってたつもりだった。
口では面倒くさい幼馴染って悪態ついていても、ずっと紗綾を大事にしてたし、歴代の紗綾の元カレへの対応だって紗綾を傷つけないようにしてきてた。
彼女ができても、紗綾の事は別次元で今まで通り大事にしてるっていうか・・。今までの彼女の事も勿論好きだったと思うけど、それこそ紗綾の言う、幼馴染でもない、恋人でもない、家族でもない、紗綾と風雅だけの特別な何かがあるのはわかってた。
・・・わかってる。俺には関係ない。
これは風雅と紗綾の問題で、俺が風雅に対して腹立ったりするのも筋違いって。
だけど・・・・
「斗亜待って?・・早い」
そう聞こえて慌てて立ち止まる。
無意識に足早になってて本当に紗綾を引っ張ってたみたいで、ほんの少しだけ紗綾の息が上がってる。
「・・・ごめん。ちょっと考え事してた」
そう言って、繋いでた手も離す。
なんかこれ以上紗綾に触れてると、今まで抑えてた何かが一瞬で切れてしまいそうな感覚になっていて、めちゃくちゃ冷静になろうとするけど、紗綾の一言でやっぱり抑えられなくなった。
「・・・・気・・使ってくれたんやろ?・・・向こうに風雅おったから」
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あお(プロフ) - ぴのさん» 好みの書き方みたいで嬉しいです!感情移入しにくいかと思いますが、全作品、固定氏名で書かせていただいてます。それで良ければ最後まで読んで頂けると嬉しいです。 (10月13日 20時) (レス) id: 8b0beef4ed (このIDを非表示/違反報告)
ぴの - 文才がとても好みなのですが、名前変換はできないよう設定しているのでしょうか? (10月13日 14時) (レス) id: 8b367529bc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あお | 作成日時:2023年10月11日 17時