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気付けば隣に居た紗綾は俺にとって居て当たり前の存在で、風雅と呼ぶ紗綾を無条件に可愛いと思ってたし、小さい時から紗綾は俺が守るもんだって思ってたから。
紗綾を避けたあの時、紗綾は自分が何かして俺を怒らせたんだと解釈してる。誕生日にもらった手紙にそう書いてあった。
俺に怒られたころが無かった紗綾は、今まであったものが無くなる虚無感にどうして良いかわからず、俺が居ないと生きていけないと紗綾は無意識に自分に刷り込んだ。
あの時の俺は紗綾がそんな事考えてたなんて知るわけもなく、あの日泣かせてしまった自分の不甲斐なさから、もう紗綾を泣かさないって気持ちだけで紗綾を守ってきた。つもり。
だから紗綾はあの日の虚無感に襲われるのがたまらなく怖くて俺に執着するんだって、高校生になって物理的に紗綾との距離ができてからなんとなく気が付いた。
だけど今更紗綾と本心を更け出して向き合う事ができない俺は、このまま俺との距離を離して、この俺と紗綾だけの幼馴染というカテゴリーを世間一般のカテゴリーと認識してくれるように願いながら会う頻度を減らし、少しづつ距離を取っていた。
そうして紗綾が俺をただの幼馴染だと認識してくれれば、この俺の奥底に仕舞ったまま捨てられない何かを捨てられると思ってた。
だから今日うっかり開いてしまったソレが、せっかく上手くやってきた俺と紗綾との距離をちょっとおかしな方へ曲げだした。
今なら軌道修正できるって頭でわかってたんだけど、なんかもう目の前で口をへの字にした紗綾を見たら、今まで耐えてたありとあらゆる感情がボロボロ溢れてきた。
そもそも今日、拓哉が紗綾の動画の話をした時から、最近思い出さなかった紗綾への感情が覗いてた。
それで終わればいつも通りだった。
でも、こういうのって、何の巡り合わせかわかんないけど、普段行く事の無い服屋で最近バッタリも会わない紗綾に会って、こうやって今までのツケのように2人の関係の清算をする羽目になった。
結局奥底に仕舞った俺の紗綾への感情が、紗綾を俺の隣に縛り付けてた。
紗綾のせいじゃない。
紗綾をどうしたって失いたくなかった俺のせい。
・・・・だから掘り下げて考えるとこうなるんだ。
わかってたけど考えないフリしてる事でこの関係を保ってたのに、もう無理。
ごめん、紗綾。
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あお(プロフ) - ぴのさん» 好みの書き方みたいで嬉しいです!感情移入しにくいかと思いますが、全作品、固定氏名で書かせていただいてます。それで良ければ最後まで読んで頂けると嬉しいです。 (10月13日 20時) (レス) id: 8b0beef4ed (このIDを非表示/違反報告)
ぴの - 文才がとても好みなのですが、名前変換はできないよう設定しているのでしょうか? (10月13日 14時) (レス) id: 8b367529bc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あお | 作成日時:2023年10月11日 17時