14 ページ14
・
――――――――――――――――――
俺の腕を掴んだままの紗綾の顔が今にも泣きそうで、この顔をされると俺は凄く困る。
「絶交するとか言わんといて?・・・・もう風雅に迷惑掛けへんから。・・お願い」
紗綾の、迷惑掛けへんなんて言葉ほど信用できないものはない。
今まで何回も言われては迷惑を被ってきたわけで、その度に、次は絶対大丈夫なんて言う。
お前の大丈夫が本当の大丈夫なら、俺はこんなに緩く適当な性格にはなってない。
いや、適当ではないけど紗綾に関しては真剣に考えたり悩んだりするのが馬鹿らしくなるくらい面倒だったし、本当はうんざりしてた。
だけど、どれだけうんざりしても絶交なんて言った事無かったから、紗綾が今、凄く必死に俺を引き留めてるのがわかって戸惑ってしまう。
実際、紗綾の面倒事に直に出くわしたのは久しぶりだったから、中学の時みたいに上手くスルー出来なかった。
こんな不快な思いをずっとしてきたのかと改めて感じて、やっぱもう関わりたくないって心底思うのに、紗綾を目の前にすると突っぱねられない俺は多分・・・。
一瞬でいろんな事を考えてしまって、うっかり気付きたくない感情に気付きそうになったけど「・・・もうわかったから離れて」って言って紗綾を引き剥がした。
絶交を回避できた事にホッとした紗綾が、お腹空いたって呟いた。
この状況でよくそんな事言えるなって思ったけど、紗綾は元々こういう奴で、俺に甘えまくってるし、きっと俺もそれを受け入れてきてたんだなって、今日は何故か妙に冷静に自分を俯瞰して見てた。
呆れて溜息をついたけど俺の口から出た言葉は「・・・何食うねん?」だったから、やっぱ俺は紗綾に甘い。
紗綾に引っ張られるようにして連れてこられたカフェは、普段俺が絶対行かないような女子ばっかの写真映えなカフェ。
店内は女子ばっかで居心地が悪すぎて出たかったけど紗綾が、風雅と出掛けるの久しぶりやねって可愛い顔で凄い嬉しいそうに言うから、さっき思い出してた中学の頃の記憶も、さっきの修羅場も一瞬で頭のどっかの引き出しに仕舞われた。単純な頭だ。
甘いものがそんなに好きじゃないから紗綾が頼んだパンケーキみたいなのを見て、食べてないけど口の中が甘くなった感じがした。
胸やけしそうなくらい生クリームが乗っかってて下にあるはずのパンケーキが見えない。
・
158人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あお(プロフ) - ぴのさん» 好みの書き方みたいで嬉しいです!感情移入しにくいかと思いますが、全作品、固定氏名で書かせていただいてます。それで良ければ最後まで読んで頂けると嬉しいです。 (10月13日 20時) (レス) id: 8b0beef4ed (このIDを非表示/違反報告)
ぴの - 文才がとても好みなのですが、名前変換はできないよう設定しているのでしょうか? (10月13日 14時) (レス) id: 8b367529bc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あお | 作成日時:2023年10月11日 17時