憂鬱な僕

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紗綾はお前のもんちゃうわ！


そう怒鳴り返そうかと思ったけど、紗綾の乙女顔を思い出し、ここで俺と王子様イケメンが喧嘩したら紗綾が悲しむと思って我慢した。


「あー・・・ごめんー。気ぃつけるわぁー」って思わず紗綾みたいに延びた語尾でゆるーく謝ったら、謝った事で気が済んだのか、上から目線で「ごめんな、じゃ」と、いつもの爽やかな王子様に戻ってた。









すげー腹立つ。
そもそも紗綾は誰のものでもないし、上から目線で言われる筋合いもない。


なんなら俺の方が上から言ってやりたい。
たかだか数ヶ月のお前と一緒にすんなって。


でも、紗綾が好きな奴だから。
これから先俺は自分の気持ちを伝えようとは思わないし、紗綾の邪魔はしないと決めてたから、こんな事でいちいち腹立ててたら俺はきっと１日中腹立ち続ける羽目になる。



だけど本当はめちゃくちゃ悔しくて仕方ないから斗亜に愚痴ったら「風雅って案外乙女なんやな」なんて見当違いな返事が返ってきた。
いや単に、この忍耐力を褒めて欲しかっただけだけどまぁいいや。




紗綾は俺が彼氏じゃなくても隣に居て欲しいと望んでる。
本当はちょっと辛いけど、あんな泣かれ方させるくらいなら全然大丈夫。

そう俺は思ってたけど、本当の彼氏は全然大丈夫なわけが無かった。







紗綾が彼氏と別れたのは、俺が彼氏に文句を言われた次の日だった。
別れたと聞かされたのは他でもない彼氏本人からだった。





教室で斗亜と琉巧と中身の無い会話をしていたら王子様イケメンが、大西ちょっと良い？と呼びだした。
昨日の今日なのに、また何か文句言われんの？と思ったけど、昨日の怒った顔じゃなくて、なんだかこないだまでの俺みたいに辛そうな顔に見えた。

廊下の隅の方まで来ても彼氏は口を開かないから「・・・どうしたん？」とこっちから聞いてみた。
するとイケメン顔を歪ませ、怒ってるような泣きそうな顔で「・・・お前のせいや」って言われた。



正直こんなにストレートに誰かからの負の感情を受けたのは初めてで、少なからず俺はショックを受けた。



言われた一言で何の事かなんとなくわかった。
俺は昨日の事は紗綾に言ってないけど、こいつが俺との会話を言ったか何かして紗綾と喧嘩でもしたんだろう・・・。





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