曖昧で不確かな未来と現在を生きる僕 (ページ15)

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締めなれないネクタイが少し大人になったように感じる高校生活に少し慣れてきたある日の放課後、ゆりさんと初めて待ち合わせをした。

僕より一つ年上のゆりさんとは、あの日以来他愛ないメールや電話のやり取りを続け、お互い好きなシリーズの映画を見に行く約束をし、お互いの家も近いショッピングモールに併設されている映画館へ行くことにした。

ゆりさんはメールはあまり好きじゃない感じで、どっちかというと電話派。文面ではお互いの感情がわかりづらいからだそうだ。僕もメールより顔を見て話したいから、ビデオ通話をよく掛け、お互いストレスに感じることなくやり取りが続いた。

電話で別れた彼とその後どうなったとか、なんで連絡先を聞いたのかとか、友達のことや家族のこと、お互いのいろんなことを、まるで前から仲が良かった友達のように話した。
ドキドキするけど気負いしないで普段の自分でいれる、久しぶりの自分に出会ったみたいで、新鮮だった。

電話でいろんな話をしたけど、彼女は僕がアイドルだという事をまだ知らない。
急に、実は僕アイドルですって言うのもなんかなぁって思ったし、ゆりさんからしたら、どこにでもいる年下男子高校生にナンパされたくらいの感覚なんだと思うと、なんとなくそんな話題を作ることもできなかったし、なによりも、どこにでもいる普通の年下男子として接してくれているその雰囲気が僕を楽にしてくれていた。

とはいえ何回か本当の事を言おうと思っていたけれど、関係が壊れてしまう気がして言えなかったし、伝えるなら顔を見てちゃんと言いたかった。

受け入れてほしいと思うけど、どうなんだろう。
今までの彼女みたいに「アイドルの斗亜」になってしまうのかな。
できれば、彼女の中の現在の嶋﨑斗亜のままでいたい。

彼女に会える嬉しい気持ちと、どこか後ろめたい気持ちが入り混じる。

そんな事を考えてるけど、まだ気持ちも伝えてないし付き合ってもない。
なんなら初めて出会った日から一度も会ってない。
現代の文明の力で実際会えなくても顔を見ながらの電話のおかげで結構仲良くはなった・・・と思うけど僕と彼女の距離はまだ全然遠い。

恋愛に関しては割と客観的な方かと思っていたけど、思ったより情熱的なんだなと少し恥ずかしくなり、僕の頭の中見られたらだいぶヤバい奴だなと自分でも思った。