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「斗亜、なんか難しい顔してるけど何かあったん？」
転げ落とした西村くんが、僕に虐められたと大げさに大吾くんにチクりに行ったのを控室の畳に寝ころびながら見ていたら、知らない間に隣で寝ころんでいた彪太郎に顔を覗き込まれた。
「難しい顔・・してた？西村くんアホやなぁって見てた」
彪太郎は僕の顔を覗き込んだまま「最近なんか斗亜がボケっとした顔してんのよく見るから疲れてんのかと思って・・」なんて、ドキリとする言葉が彪太郎の口から出た。
「そうやなぁ・・・3週間以上舞台やってたらガス切れなんかも」
みんなそうやから斗亜だけちゃうけどな、と当たり障りない返事をし、気持ちを切り替えて彪太郎に笑顔を向けた。
僕の自然な笑顔に見せかけた若干不自然な笑顔をジッと見ながら「春休み全然遊べんかったし、来週から学校始まるしな・・これから体力つけてかなあかんな」
そう言って手に持っていたペットボトルの水を僕に渡した。
ありがとうと受け取り、お互い立ち上がって他愛ない話をしながら楽屋を後にした。
同期で同い年の岡崎彪太郎は女姉妹の真ん中だからか穏やかでいつも優しい。
彪太郎が怒ったところを見たことがないけど、我慢しているわけじゃない。
「怒るほどの事ちゃうやん？」っていつも言う。
「みんなが良かったら俺はそれで良いよ」もいつも言う。
意見が無いんじゃなくてそれが自分の意見で、いつだって周りを見てる。
誰よりも人に優しくできる人なんだと思う。それは誰よりも人を見てるから。
そんな彪太郎に疲れてると指摘され、自分の感情が隠せてない事に気付く。
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メディアに求められた、明るく元気いっぱいで可愛い素直なセンター。
実際、本来の自分との大差はそんなに無いし、難しいキャラじゃない。
だからこそ壁にぶち当たった。
他のグループにも同じタイプのキャラはいるから、僕には個性がない。
つい半年前まで関西ジュニアに無かった、わかりやすい優劣。
適当に選ばれた人選では無い事はわかっていた。
これだけ関西にグループを作らなかった事務所が、急に３組も作り、内２組は若手からベテランまでバランスの良い人選なのに、Lilかんさいだけ若手の少人数。
プロデューサーに事務所トップグループのメンバーを持ってきた事務所。
子供の僕らでも、その意味はなんとなくわかっていたし、選んでもらったからには期待に応えたい。
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作者名：あお | 作成日時：2023年4月10日 16時
