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すぐに輪の中に入っていく蒼弥様を見届けてから俺も腕を引かれるままに、さっきとは別の友人たちのもとへ
『お前また身長伸びた?』
「もうすぐ180」
『うーわ、顔良しスタイル良しのくせに彼女いないとかありえねえ』
彼女いない という単語に数人こちらを振り向く高校時代の同級生
『作間くん彼女いないの?』
「あぁ、うん、笑」
上から下まで抜かりなく綺麗に着飾った彼女たちは、少なからず今日の自分に自信があるのだろう
少なくとも、高校時代、今みたいに腕に絡みつかれたことなんてなかった
『え〜意外!こんなにかっこいいのに』
成人式マジックにあやかろうとしてるだけかもしれないが
寄ってくる女友だちの相手をしながら友人との会話も続けていれば時間が経つのはあっという間で、
女友だちに関しては、興味が無さすぎる相手だと逆に優しく接することができることに気がついた
蒼弥様が入っていったグループがわらわらこっちに向かってきてるのが見えて、大集合だな、なんて考えていたところに、
遅れて会場に飛び込んできた友人がひとり
『ごめ、寝坊した!みんな、久しぶり!』
『おー、久しぶり!お前まだ寝坊してんの?笑』
ネクタイが曲がっていて、いつもの癖で思わず手を伸ばした
『…へ、あ、作間? ひさしぶり、』
「久しぶり、 ん、ネクタイ曲がってた」
『あ、ありがと…』
彼はたしか、蒼弥様よりも少し背が低かった
『てか、作間身長伸びたね?どんどん離されてるよー』
「そうかも 10cmくらい違うんじゃない?」
『まだまだ俺だって成長期ですー』
不服そうな顔で見上げてくるのが面白くて思わず彼の頭に手を置いた
「今のままで良くない?かわいいサイズ感」
『っ、ばかにしてんだろ〜…』
「してないしてない、笑」
気づけば周りに人がたくさん集まっていて最早クラス会のよう
なつかしい顔ぶれや声を掛けてくれる友人たちと学生時代に戻ったように話し込んでしまった
そのせいで俺の1番大切な人がいないことに気づくのがあまりにも遅かった
「っ、ね 蒼弥様って、」
『? あー猪狩? お前まだ付き人だっけ?やってんの?』
「今日までだよ」
『猪狩ならだいぶ前からいないよー トイレ行くって』
『そ、なの… ありがとう ごめん俺抜ける』
引き止めてくる女友だちは無視してトイレへ向かった
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作者名:あいと | 作成日時:2022年9月29日 23時